帝国ホテル厨房物語

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2004年7月1日発売)
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本棚登録 : 322
感想 : 32
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著者の村上信夫氏は2005年に没されている。お悔やみ申し上げたい。本書は村上氏の自伝であり、前半はページを繰る手が止まらず、笑いあり涙ありの良書である。村上氏は一途に料理、特にフランス料理を愛しており、まさしく料理を作るために生まれてこられたのだなと思うほど、情熱的な人物である。戦争前に先輩シェフから教わった餞別レシピは、参考にしたいものが沢山ある。また本書には写真が複数枚掲載されており、当時の雰囲気を身近に感じることができる。村上氏はふくよかで口髭、メガネが可愛らしい印象の方だが、一番気に入った写真は犬山徹三氏である。P117に掲載されているのだが、名前に負けず劣らず、どえらい迫力の格好良さだ。いや、渋さというのか。くっきりとした二重まぶたに一文字に結ばれた口元。その目には鋭い光が宿り、シングルのスーツを恰幅良く着こなされている。ストライプのネクタイもお茶目で良い。犬山氏は、村上氏をヨーロッパ留学へ送り出してくれた恩人だ。テレビ出演の話を持ちかけたり、先見の明がある、非常にかっこいい紳士である。

「現地の流儀を尊重する。悪い点は見ずに、いいところだけを学ぶんだ。」
「勝手なメニューは書くな。自己満足するようなメニューを書いて威張っているんじゃないぞ。お客様が喜んで、今日の料理はおいしかった。楽しかったと言われて初めて、「おれの料理は」と威張るんだぞ。(犬山氏)」
「若い料理人へのアドバイス。欲を持て。急ぐな。最も大切なのは基本である。」
「料理の極意は愛情、工夫、真心」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本経済新聞出版社
感想投稿日 : 2018年5月27日
読了日 : 2017年6月22日
本棚登録日 : 2016年6月22日

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