日中の文化をよく知る著者の、比較文化論。
日本は感性の国。
中国は理の国。
こういう二分法は、今では戒められるところかもそれない。
私は、感性が理に劣るものとは思わないが、西洋風の二分法では感性は劣位かもしれない。
そのため、この本に憤慨する人もいるかもしれない。
ただ、まあ、中国をあまりに知らない身には、面白かった。
儒教は一部の例外的な時期(例えば文革)を除けば、ずっと中国人に影響を与え続けてきた、と筆者は言う。
私は、辛亥革命以降儒教が排斥されてきたと思っていたので、まずここで、へえ、そうか、と。
そして、彼らは理を尊ぶ。
理があることは義=正義と考えるらしい。
そして、義を欠けば、死んで後さえも批判される。
日本のように、死者を鞭打つことを忌む考えはないらしい。
筆者は、歴史認識をめぐる両国の対立の淵源がここにある、とみている。
この説明に、私は納得してしまった。
というより、これでは溝が埋まる日が来るとは思えず、暗澹としてしまう。
ところで、この本は、王さんが日本語で書いたのだろうか。
プロの方にこんなことを思うのは、かえって失礼なことかもしれないが、だとすればすごいことだ。
ドナルド・キーンさんさえ、主要な論を母語で書いていたことを思うと。
実は、多少、読みづらいところもあった。
特に、必要以上に主語が省かれる傾向がある点で。
それと関わって、論文なのか、もう少し主観性を打ち出した文章なのか、理解に迷うところもある。
それは、もしかすると、私たちの書く文章が変わってきているからなのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2019年7月15日
- 読了日 : 2019年7月15日
- 本棚登録日 : 2019年7月15日
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