文明の衝突と21世紀の日本 (集英社新書)

  • 集英社 (2000年1月18日発売)
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翻訳は2000年刊行。
話題になった本だったような記憶がかすかにある。
自分の年齢を考えたら、リアルタイムで読んでいてしかるべき本なんだけど。

…でも、今からでも読む!
だって、どのみち今も昔も、国際政治音痴だし。
喪うものはないはずだ。
と開き直って読んでみた。

現在の状況と合致する部分のみが強く印象に残りやすいのだろう、とは思うけれど、本書の内容は現在にも通用する部分が多いと感じる。

アメリカの覇権の弱体化。
一極集中ではなく、世界が多極化する。
1990年代から2000年代での見通しは、まさしくその通りになりつつあると感じられる。

そこでどのような新しい国際秩序ができるか。
本書では採られる方策を二つに類型化した。
ひとつは「バランス化」(バランシング)。
もう一つは「相乗り」(バンドワゴニング)。
覇権国(アメリカ)と地域の中核国の関係、あるいは中核国と地域の二番手の国との関係にそうした方策が採られ、関係が出来上がる。

さらに、その関係形成に、文明の違いや近さが影響を与えるというところが、この本の眼目。
共通する文化を持つ二つの国や集団の間では緊張関係があっても比較的協調関係が生まれやすく、異なる文化の間では紛争が激化しやすいということらしい。
国民国家と文化のまとまりが一致していないところで民族紛争が起きるという話もある。

そういう眼で米中関係、現在のロシアとウクライナの関係を見ていくと、ああ、なるほど、と頷けるところはたしかにある。

ところで、本書にはアメリカの多文化社会化に否定的な見方が示されている。
歴史的に見て、多文化を追求する国が永続したためしがないからだということだ。
トランプ政権が誕生したり、その後のバイデン政権も、白人の、中産階級のアメリカを再生させようとしていることを見ると、今揺り戻しが起きているようだ。
筆者がいうように連合国家になる、という選択肢もアメリカにはあり、そういう未来を選択することもできるのではないかと思うけれど、ダメなのかな?

さて、本書は「21世紀の日本」ももう一つのテーマとしている。
日本は中華文明から派生してはいるけれど、孤立した文明であるため、例の文明の衝突理論から考えると、なかなか他国と緊密な協調関係を結べないらしい。
力をつけていく中国とどう渡り合うか。
過去と同じように、その時々の覇権国家、別の地域の中核国家の力を借りながら牽制するしかない、ということのようだ。
割と、まあそうなんだろうな、と思っていたことだった。

正月に読む本の選択を誤ったといえばその通りだが、何というか世界の弱肉強食の現実をつきつけられ、暗い気持ちになってしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月4日
読了日 : 2023年1月2日
本棚登録日 : 2023年1月4日

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