都会の鳥の生態学-カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 (中公新書 2759)

著者 :
  • 中央公論新社 (2023年6月21日発売)
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感想 : 26
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郡司ペギオ幸夫さんの本で苦しんだ(笑)ので、鳥つながりの本書で少し気分を変えてみた。
(噂によれば郡司さんはペンギン好きが高じて、息子さんに「ペギオ」と命名しようとしたというが反対され、ご自身のペンネームにしたというのは本当だろうか?)

タイトルのごとく、本書は都市(主として東京、千葉周辺)の鳥を取り上げる。
そのため、さして鳥類ファンでもない(というか鶏は怖いと思う程度の)自分にもおなじみの面々が次々に登場する。
ツバメ、カラス、スズメは章立てして、しっかり論じられる。
カワウ、カイツブリ、コアジサシ、コブハクチョウ、カモメらの水鳥も、ハヤブサ、チョウゲンボウ、オオタカ、ツミ、フクロウの猛禽類も登場する。

著者は長年都市鳥の観察を続け、都市鳥研究会の代表も務める方だけに、データもネットワークも幅広い。
そうした豊富な事例を通して、経年変化も描き出される。
人間の生活の変化に合わせて、鳥たちも大きく暮らし方を変えている様子が見て取れるのが興味深かった。

バブル経済崩壊後しばらくまでは、とにかく東京にカラス(ハシブトガラス)が増えていた。
それは彼らの餌となる生ごみが多く、しかもあまりうまく処理されずに廃棄されていたため、繁殖が進んだからだったそうだ。
それが、経済の変化で餌が減ったこと、ごみが荒せないように捨てられるようになったこと、そしてカラス駆除の成果で、東京のハシブトカラスが激減する。
それと入れ替わりに、里山に住むとされるハシボソガラスが都心近くに進出してきたり、カラスを餌とする猛禽類が都心に住むようになったり。
わずか数十年でそんなにも変わるのだと驚いた。

渡りの時期、巣の位置や、出入りする時間、親鳥の給餌方法などが紹介されていく。
これだけの観察を続けていくのは、本当にすごいことだと思う。
しかし、筆者は、観察中に近所の人に怪しまれた、という笑い話も加え、全体のトーンとして、鳥が大好きな先生の楽しい話を聞いているかのような雰囲気がある。

2023年の読書納めとして、なかなかよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月1日
読了日 : 2023年12月31日
本棚登録日 : 2024年1月1日

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