世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

著者 :
  • 新潮社 (1988年10月1日発売)
3.84
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「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)」を読了。本作の構成は「世界の終わり」の章と「ハードボイルド・ワンダーランド」の章が交互になっていて上巻21章、下巻19章の合わせて40章。全40章の中でも29章(下巻)が一番面白く、ここがピークだったと思っている。

ちなみにこの文庫本は新装版が出ているので、私が読んだ旧版とはページが一致していないことが考えられる。

本作が村上春樹の傑作として呼び声が高いのと、村上春樹の他の作品を何点か読んだこととを考慮しても、やはり面白いと思った。読後すぐにはそれほどでもないかな、と思ったが、読後しばらくして、次の引用を読んでから何回も無意識にも考えてしまい、納得して常識にもなった。このことの指摘は、とんでもないことだと思うに至り現実的にこれは真実だと思うに至る。この表現は凄いし、内容も凄い。

下巻p123
〝「そうです。あんたは今、別の世界に移行する準備をしておるのです。だからあんたが今みておる世界もそれにあわせて少しずつ変化しておる。認識というものはそういうものです。認識ひとつで世界は変化するものなのです。世界はたしかにここにこうして実在しておる。しかし現象的なレベルで見れば、世界とは無限の可能性のひとつにすぎんです。細かく言えばあんたが足を右に出すか左に出すかで世界は変わってしまう。記憶が変化することによって世界が変わってしまっても不思議ない」‘’

下記引用
上巻
p262「金の計算してちゃ戦争には勝てない」

p326「人間は誰でも何かひとつくらいは一流になれる素質があるの。それをうまく引き出すことができないだけの話。引き出し方のわからない人間が寄ってたかってそれをつぶしてしまうから、多くの人々は一流になれないのよ。そしてそのまま擦り減ってしまうの。」

p361「ええ、本当の天才というのは自分の世界で充足するものなのよ。」
 
p372「信じていれば怖いことなんて何もないのよ。」

p373「祖父は何も考えないのよ。彼はあたまをからっぽにすることができるの。天才というのはそういうものなの。
頭をからっぽにしていれば、邪悪な空気はそこに入ってくることはできないのよ」

p375「人は何かを達成しようとするときにはごく自然に三つのポイントを把握するものである。
自分がこれまでにどれだけのことをなしとげたか?今自分がどのような位置に立っているか?
これから先どれだけのことをすればいいか?ということだ。この三つのポイントが奪い去られてしまえば、あとには恐怖と自己不信と疲労感しか残らない。(略)問題はどこまで自己をコントロールできるかということなのだ。」

下巻
p92「人間のんびりするとロクのなことはせんもんです。

p123「そうです。あんたは今、別の世界に移行する準備をしておるのです。だからあんたが今みておる世界もそれにあわせて少しずつ変化しておる。認識というものはそういうものです。認識ひとつで世界は変化するものなのです。世界はたしかにここにこうして実在しておる。しかし現象的なレベルで見れば、世界とは無限の可能性のひとつにすぎんです。細かく言えばあんたが足を右に出すか左に出すかで世界は変わってしまう。記憶が変化することによって世界が変わってしまっても不思議ない」

裏表紙の言葉・上巻
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす<僕>の物語、【世界の終わり】。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた<私>が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する【ハードボイルド・ワンダーランド】。静寂な幻想世界と波乱万丈の冒険活劇び二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

裏表紙の言葉・下巻
<私>の意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会した<私>は、回路の秘密を聞いて愕然とする。私の知らない内に世界は始まり、知らない内に終わろうとしているのだ。残された時間はわずか。
<私>のいく先は永遠の生か、それとも死か?そして又、〔世界の終わり〕の街から<僕>は脱出できるのか?同時進行する二つの物語を結ぶ、意外な結末。村上春樹のメッセージが、君に届くか!?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月20日
読了日 : 2020年7月20日
本棚登録日 : 2020年7月20日

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