まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2004年5月28日発売)
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感想 : 151
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家族狩りシリーズ最終巻。
他の巻の2倍の厚さに衝撃を受けたが、読み始めたら怒涛の連続で一気に読んだ。

この話、誰に感情移入するかでまったく別の感想になる。
一方的に悪いのはどちらと断じることがしにくいなぁ。
大野夫妻は悪かと聞かれても、彼らに(電話相談で)救われた人にとっては善だろう。
そして、何も知らずに実森少年の歪んだ怒りの解消の標的にされていた巣藤は、実森一家が「愛の儀式」で殺されたからこそ生きている。
ただ見方を変えると、自分の子供を手にかけなければと思うほど追い詰めた、息子を苦しめた奴らと、それを野放しにしたうえに逆ギレする厚顔な親達に対する間接的な復讐ではなかったのか?とも思える。

馬見原も真弓にとっては、よい父親ではなかったが、研治にとってはよい父親だったのだろう。

巣藤のところは…コメントに困る。自分達の子供に諦念と侮蔑の目でしかみられないって…。

衣食足りて礼節を知るじゃないけど、
人間は自尊心を持たねば中々幸せを感じることができないものなんだと思う。
勿論人によって価値観が違うから、大事にしている心の在り方は違うだろうけど。研治の場合それは間違いなく母と自分に酷いことをした男を「許す」事ではなく、「やっつけた」という自信の回復だったのだろう。

巣藤と氷崎がいい感じにまとまって(現在巣藤は無職なので祖父が大反対してるけど(笑))
芳沢亜衣も家庭は崩壊してしまったが、自分の足で歩き始めた。

馬見原家も代償は大きかったが、1つの決着が着いた。

綾女親子も新生活が上手く行き、元同僚にも慕われて、元夫は事故死で安心。

全員オールハッピー!という感じではなく、どこかに傷を抱えつつ、未来に進んでいる。
玲子の事が心残りだが、これが今後の氷崎達の課題だろう。(おそらくタイトルにもかかってる)
父親以外に心の拠り所が見つかるように見守る。
でも深入りしすぎてはいけない。
それらのジレンマを抱えつつ情熱をもって子供達と関わる彼らの道を優しい光が照らしますように。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年5月27日
読了日 : 2019年5月27日
本棚登録日 : 2019年5月8日

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