素直な戦士たち (新潮文庫 し 7-13)

著者 :
  • 新潮社 (1982年3月1日発売)
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千枝はお見合ひの席で、普通では考へられない質問を連発します。
あなたのIQ(知能指数)はいくつ?
出世したいですか? 諦めてゐる? それは結構なこと。
御趣味は? 無趣味なの? 結構な答へです。

千枝は、今後生れるであらう自分の息子(と決め付けてゐる)に、徹底的な英才教育をし、東大に合格させることに人生の目的を決めてしまつてゐたのです。
その第一歩として、その父親になるに相応しい男性を物色してゐたといふ訳であります。
IQ153、出世に興味なし、趣味無しの松沢秋雄は理想的な相手として千枝は結婚を決めました。
IQの高い男児を出産するのは、25-26歳がベスト、といふ情報を得て、24歳に見合ひをしたと、まづそこから始める周到さであります。

待望の長男が誕生しますが、母親の千枝は、彼に自分が出来るすべてを注ぎ、英才教育をほどこします。並みの教育ママではありません。当然夫の秋雄にも協力を求めます。秋雄は振り回されながらも千枝の真剣さに圧倒されて従ふのであつた。
二人目の子供を産むまでには、3年の間隔を空ける計画だつたのですが、年子の弟が生れます。
これがまづ最初の計画違ひと申しませうか。
最初はごく小さなほころびから、悲劇的な結末へ一気に話は進んでいくのでした...

実はこの作品、30年くらい前にテレビドラマになつてゐます。当時私も観ました。
城山三郎さんの原作と知り、経済小説の城山氏がホームドラマ? と意外に思ひました。テーマ曲まで耳に残つてゐます。
千枝役は長山藍子さんで、鬼気迫る母親を演じました。夫は中谷一郎さん。そのおろおろぶりが印象的。風車の弥七よ、もつとしつかりしろとつひ声をかけたくなるほど。

さてこの小説、さすがにここまで戯画化されると教育問題としては「良質な大人の寓話」と捉へる人が多いかもしれませぬ。しかし根底にあるのは、やはり親子関係の問題ではないでせうか。
親離れ、子離れできぬ親子、子供にしか生甲斐を持てない母親、美味しいところだけしやしやり出る父親...30年経つて、大きく変つたと、果たして言へるでせうか。

http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-63.html

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2011年12月3日
読了日 : 2009年10月18日
本棚登録日 : 2011年12月3日

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