プロテスタントのキリスト教徒として、元外交官としての立場から、正視眼で「創価学会と平和主義」について論じた意欲作。こういう本が朝日新書から出ることに、ある種の感慨を覚える。
集団的自衛権行使を容認する(と見える)文言を入れた、安倍政権のいわゆる「7・1閣議決定」。その直後から、多くの論者が「公明党は『平和の党』の看板をおろした」と批判した。
そのなかにあって、孤軍奮闘に近い形で公明党支持の論陣を張ったのが、著者の佐藤氏であった。
主張の骨子は、“一連の経緯は、じつは公明党の圧勝。集団的自衛権行使に対する歯止めは、むしろ閣議決定前よりも厳格になった”というもの。そのことは、本書の第1章「集団的自衛権容認の真相――公明党は本当に押し切られたのか」で改めてくわしく論じられている。
佐藤氏の論陣によって潮目が変わり、同様の見方をする識者も少しずつ増えていった。
本書は、集団的自衛権をめぐる論争があったからこそ緊急出版されたものであろう。
つまり、第1章こそが本書の目玉であるわけだが、第2章以降も読み応えがある。創価学会の歴史を振り返り、その平和主義を評価していく内容である。中立的視点から書かれた創価学会入門としても、優れた本となっている。
「あとがき」には、次のような一節がある。
《本書を上梓するにあたって「創価学会について書くと、余計な敵を作ることになるので、止めたほうがいい。職業作家としてマイナスになる」という忠告を数人の友人から受けた。しかし、敵を作ることよりも、真実を書かないことによって戦争への道を加速することの方を私は恐れる。》
その勇気やよし。
テーマからして激しい賛否両論を巻き起こすに違いない本書だが、その論議が思考停止のレッテル貼りに終わらず、実りあるものになることを祈りたい。
- 感想投稿日 : 2018年10月9日
- 読了日 : 2014年10月14日
- 本棚登録日 : 2018年10月9日
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