「超」集中法 成功するのは2割を制する人 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2015年9月17日発売)
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感想 : 27
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 タイトルから「集中力を高める極意」が開陳された本を期待したのだが、そうではなかった。これは、いわゆる「80対20の法則」(本書は「2:8法則」と表記)「パレートの法則」についての本なのだ。

 野口は、“世の中のことはたいてい、2割の人・こと・モノが全体の8割の成果を上げている。「コア」となるその2割に力とリソースを集中することが、仕事・勉強・組織作りの極意である”とし、その実例を挙げ、2割の「コア」を見極める方途を探っていく。

 野口がたくさん出してきた「知的生産」本のうち、真に独創的なのは最初の『「超」整理法』だけだと思う。
 それ以後の著作は、そこそこ参考にはなるものの、独創性はあまりない(一般書の話。経済学者として出した専門書の独創性については、私にはわからない)。

 本書も、「80対20の法則」を援用したビジネス書・知的生産本ならほかにも多いし、とくに独創的ではない。

 それに、過去の著作の焼き直しにすぎない章もあって、その点でも感心しない。
 第3章は『「超」整理法』の焼き直しだし、第4章は『「超」勉強法』の焼き直しだ(『「超」整理法』も『「超」勉強法』も、じつは「2:8法則」に沿った方法論だった、というエクスキューズがつけられている)。

 あと、本書は過去の野口の著作と明らかに文体が違う。読点が妙に多い、ノロノロした感じの「です・ます調」になっているのだ。おそらく、ライター等に話をまとめさせたのだと思う。過去の著作は歯切れよい明晰な文体がそれ自体魅力的だったので、その点もマイナス。
 まあ、野口ももう後期高齢者だから、自分で書くのはシンドイのかもしれないが……。

 それでも、随所に卓見はあるので、「駄本」とまでは言わない。
 たとえば、古典や歴史を学ぶことの重要性についての指摘(140ページ~)。

 ビジネスであれなんであれ、何が2割の「コア」に当たるかを的確に見抜く目を持つためには、全体観を持たねばならない。その全体観を養うために大切なのが、古典や歴史を学ぶことなのだと、野口は言う。

《古典は、学問が現代のように専門化し細分化していなかった時代の知を表しています。ですから、古典をいま読むことは、全体像を把握する上で、有用です。
 歴史は、教養の中で重要な地位を占めています。技術が進歩し、資本蓄積が進んでも、社会活動とは、所詮人間集団の営みだからです。権力者や大国が勃興し、滅びるさまを見ると、現代社会の把握にも、重要な示唆を与えてくれます。》

 これはまったくそのとおり。大前研一など、底の浅い「古典的教養無用論」を説く論者が最近散見するが、私はこれからの時代こそ、ビジネスシーンにおいても、古典をしっかり学んでいる人の重要性が増すと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 知的生産の技術
感想投稿日 : 2018年10月3日
読了日 : 2015年12月17日
本棚登録日 : 2018年10月3日

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