岡崎に捧ぐ (5) (BIG SUPERIOR COMICS SPECIAL)

著者 :
  • 小学館 (2018年10月30日発売)
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感想 : 26
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私は、最新作『きょうも厄日です』で、ようやく山本さほ作品の面白さに気付いた。

それ以前から存在は知ってはいたが、「なんか手抜きみたいな絵を描くマンガ家だな~」という印象しかなく、食わず嫌いをしていたのだ。

で、遅まきながらファンになった者として、代表作と言われる『岡崎に捧ぐ』全5巻をまとめ買いし、一気読みしてみた。

これは傑作だ。山本さほのよいところがすべて発揮されている。

一見ヘタウマ風な絵柄ながら、じつはすごく絵がうまいマンガ家であることもわかる。そのうまさがよく示されているのが、『岡崎に捧ぐ』のコミックス各巻の見事なカバー画である。

笑いと涙の要素が、絶妙のバランスで配合されている点も素晴らしい。

ちりばめられた「あとを引く笑い」と、「コメディだから」と油断していると不意に斬り込んでくる怒涛の切なさ――2つの要素がないまぜになって、豊かな物語世界を構築している。

『岡崎に捧ぐ』は、山本さほの自伝的作品である。
小学4年生のころから、30歳を過ぎてようやくマンガ家としての第一歩を踏み出すまで――約20年間が、親友「岡崎さん」との関係を軸に描かれている。

小4のときの岡崎さんとの出会いから物語は始まり、岡崎さんの結婚式で幕を閉じる。作品の末尾には、「この作品を親友の岡崎さんに捧ぐ」という献辞が掲げられている。

山本さほも岡崎さんもかなり変わったキャラクターの持ち主であるため、ありきたりな友情ストーリーには終わっていない。

ありていに言えば2人とも非リア充側であり、世間のメインストリームから外れており、どこか生きづらさも感じさせる(とくに、岡崎さんの幼少期の家庭環境は、いまから見ればネグレクトに当たる)。

つまり、従来の友情ストーリーならけっして主人公にはならず、脇役/モブキャラに終わるような2人が主人公に据えられているのであり、そのギャップが面白さにつながっている。

山本さほと同世代の読者なら、世代的な懐かしさを感じさせる要素も満載だろう。
だが、同世代でないと楽しめないようなマンガではなく、普遍的な友情物語として優れている。代表作と呼ばれるにふさわしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ/や行の作者
感想投稿日 : 2021年10月22日
読了日 : 2021年10月22日
本棚登録日 : 2021年10月22日

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