著者が(ノンフィクションでは)初めて過去の歴史に挑んだ作品だ。
1945年3月10日の東京大空襲で親と家を失った子どもたちなど、終戦直後の焼け野原にあふれた戦災孤児たち。彼らはどのように生きのび、また死んでいったのか――。
5年を費やして100人近くの当事者・関係者を取材し、膨大な資料を渉猟して、戦災孤児たちが歩んできた道のりをたどった労作である。
《戦後の食べるものさえない極限の状況で、浮浪児たちは生存本能に突き動かされるようにして生きた。物乞いをし、日本各地を流浪し、残飯を食し、犬を殺し、強奪をしながらも生きのびた。(「あとがき」)》
浮浪児たちの過酷な人生が次々と描き出されるのだが、彼らに手を差し伸べた人もたくさんいたことが随所に記されており、読んでいて救われる思いがする。
石井光太のノンフィクションにはいつも、人目を引くドギツイ場面、エグい場面をことさら強調して書くような「癖」が感じられる。一歩間違えるとセンセーショナリズムに堕してしまう危うい「癖」であり、本書もその危うさから自由ではない。
それでも、本書はまぎれもない力作だと思う。
浮浪児だった人たちの大半が70代~80代となり、取材自体が困難となるなか、よく100人近くもの証言者を探し当てたものだ。そして、それらの証言と各種資料の記述を丹念につなぎ合わせ、一つの全体像を構築してみせた力量にも脱帽である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクション一般
- 感想投稿日 : 2018年10月8日
- 読了日 : 2014年11月26日
- 本棚登録日 : 2018年10月8日
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