筑摩書房のPR誌『ちくま』に著者が連載しているエッセイ「ネにもつタイプ」の、単行本化第2弾。つまり、講談社エッセイ賞を受賞した『ねにもつタイプ』の続編である(『ねにもつタイプ』刊行からもう6年も経ったと知り、時の流れの速さにビックリ)。
調子の出ない回もあるが、一冊通しての面白さのクオリティは『ねにもつタイプ』に劣らない。むしろ、著者の特異な「妄想力」はますますパワーアップしている。『ねにもつタイプ』が好きな人なら、きっと本書も好きになるだろう。
読んでいて思わず吹き出した一節を、いくつか引いてみる。
《たくさんの空き瓶を並べ、その前で両手を腰に当てて仁王立ちになっているうちに、バルコニーから群集を見下ろしているような気分になってきた。
「愚民どもめ」と言ってみる。ちょっと愉快だ。》
《傘運のない私だが、ビニール傘運だけはある。強力にある。
愛情のかけらだになく、なくなればいいと思いながら使っているのに、いつまで経ってもなくならない。》
《もし犬や猫やウサギやパンダに人間の耳がついていたらどうだろう。壊滅的にかわいくなくなる。だが逆に人間に動物の耳をつけると、むしろかわいくなる。人間の耳の一人負けだ。》
《「ん」の最終野望、それはあの王様気取りの「あ」を出し抜いて、いつか自分が五十音の先頭に立つことだ。その日を夢見て、彼は最後尾で虎視眈々と機会をうかがっている。》
岸本のエッセイ集はこれが3冊目だが、3冊とも、手元に置いて何度も読み返す価値のあるものだ。
ところで、岸本佐知子はなかなかの知的美人だと思う。「うーむ、美人なのにこんなヘンテコなエッセイを書いておるのか」と思うと、ますます面白く読める。
- 感想投稿日 : 2018年10月22日
- 読了日 : 2012年11月22日
- 本棚登録日 : 2018年10月22日
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