モンテ・クリスト伯 7冊美装ケースセット (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2007年12月18日発売)
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本棚登録 : 330
感想 : 20
3

生きてきて他人に嫌な目に遭わされた人ことがない人は少ないと思うが、それに対して復讐をした人も少ないのではないだろうか。この小説は無実の罪で14年も投獄された主人公ダンテスがシャトー・ディフから脱獄し、モンテ・クリスト島の莫大な財宝を活用して自分を陥れた4人の人間たちに復讐するまでを描いた話なのだが、その過程を細かく追うことで非常に(物語的にも物理的にも)厚みのある話になっている。

読む前はなぜここまで長いのかと思っていたが、復讐の方法は背中から一発撃って終わりにするような単純なものではなく、隠していた過去の罪を世間に公表させたり、因縁の相手の妻を唆して家族を毒殺させてじわじわといたぶるなど綿密な計画と長い準備が必要なためだった。このために脱獄してから誰が自分を陥れたかを調査し、協力者を集め、身分を偽って社交界に入り込み、因縁の相手の弱みを握り、関係者を都合のいいように動かすために唆すなどの描写がとても長く、脱獄してから復讐の相手が倒れるまでに文庫本3冊ほどを費やしている。それでも定期的に盛り上がるポイントを挟んでいるので、読んでいてダレることはほとんどなかった。最後まで読んでダンテスの復讐がどうなったかを見届けたときは簡単に読み終わる本では得ることができない大きな達成感を感じた。これだけ長い本だとなかなか読もうという気持ちにならないので、今読んでよかったと思う。

印象に残った点をいくつかあげると、
・読みにくいほどではないが言葉遣いが時代がかっていて、改訳することの意味を感じた。

・因縁の相手はほぼ全員ダンテスのことを忘れていて、変装が完璧だったとはいえ本人を目の前にしても言われるまでまったく思い出さないのが妙に現実味があった。また誰も彼もがダンテスのいいように操られるのが滑稽でもあった。

・フェルナンは最終的に自殺したが、裏切った相手はダンテス以外にも多くいることが示唆されており、他にを恨みを買っている人間が多々いる中でダンテスひとりが具体的な復讐に打って出てきたところで自殺までするほどだろうかと思った。

・フェルナンと結婚した元婚約者のメルセデスに対しても事情を何も知らなかった相手に少し薄情ではないかと感じてしまった。メルセデスは憎悪、貪欲、利己心よりも恐怖のためにダンテスの元を離れたというので自分を責めているが、前者3つの方が邪悪で情状酌量の余地はあると思うのだが

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2020年8月22日
読了日 : 2020年8月22日
本棚登録日 : 2020年8月22日

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