戦闘妖精・雪風〈改〉 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-27)

著者 :
  • 早川書房 (2002年4月15日発売)
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本棚登録 : 2889
感想 : 317
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『戦いには人間が必要だよ』零は唐突に言った。『でもどうしてだろう』少佐は退室しかけた足を止めて振り返った。『人間に仕掛けられた戦争だからな。すべてを機械に代理させるわけにはいかんだろうさ』

なんとなく敬遠していたタイトルだったが、読み進めるうちにストーリーと世界観、そして上の会話にも含まれている作品のテーマに夢中になった。

突然異空間につながった南極を通して地球に侵攻してきた異星体・ジャムと戦う超国家組織・フェアリイ空軍(FAF)所属の深井零少尉は、その中でも情報収集を至上任務とする特殊部隊の一員で、彼らの任務は何事があっても情報を持ち帰ることである。そのために彼らは高性能な戦術戦闘電子偵察機「スーパーシルフ」を駆り、彼らの部隊には味方が撃墜されようとも情報収集に徹するという非情な判断ができる類の人間が集められている。主人公の深井零も、そのご多分に漏れず愛機のスーパーシルフ・「雪風」以外には、ほとんど関心を示さない。しかし、物語が進むにつれて零は自分と雪風の関係に違和感を覚え始める。それは零の上司であり、唯一の親友でもあるブッカー少佐も同じだった。彼はこのジャムとの戦いに人間は必要なのかに苦悩するー

人間とは、機械とは、そしてその関係はという抽象的な主題でありながら、ジャムとの戦いという形を通じて描写することで鼻につくことなく入ってくるところに驚いた。続刊以降で零はどのように変化するのか、作者は先の主題をどのように描いていくのか、ジャムとの戦闘はどう展開していくのかなど気になる要素がたくさんあるので、楽しみに読んでいきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2020年11月22日
読了日 : 2020年11月22日
本棚登録日 : 2020年11月5日

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