光あるうちに―道ありき第三部 信仰入門編 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1982年3月1日発売)
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〈考えてみると、わたしたち人間と絶対共犯者にならない、正しく清い存在は誰か。それは神である。だから、自己中心であればあるほど、神を嫌う。神を見ようとはしない。神を無視してやまない。「神のほうを見ない」これが原罪なのだ。〉p34

〈一切を人手に頼らねばならず、自分で出来ることは呼吸をするだけというその人の顔が、実に輝いていたという例をわたしは書いた。この人は、何故にむなしさに陥らずにすんでいるのか。先日、わたしはある六十を過ぎた癌患者が、日夜世界の平和を祈り、知る限りの人々のために祈りを捧げて、一日の時間が短かくてならないという話を聞いた。なぜ彼らが虚しくならないのか。それは、誰も彼から奪うことのできない実存を知っているからだ。虚無を満たすもの、それは実存しかない。実存とは、真実の存在なる神である。永遠に実在する神である。この神を信ずる時、わたしたちは虚無を克服することができるのだ。〉p95

なぜかくも重病患者に神を信じる者が多いのか。彼らには何もないからではないか。自分には何もないと真実信じられたとき、神を信じる道が開けるのではないか。一般人が神を信じにくいのは、自分には何もないと本当のところ思うことがなかなかできないからではないか。常に無の意識に晒されていない。祈りの心をすぐ忘れてしまうのもそのせいか。

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感想投稿日 : 2021年12月21日
読了日 : 2021年12月21日
本棚登録日 : 2021年12月19日

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