臆病者のための株入門 (文春新書 514)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年4月20日発売)
3.70
  • (172)
  • (299)
  • (328)
  • (38)
  • (7)
本棚登録 : 2638
感想 : 277
4

お金についての不安。
シングルであろうが、世帯持ちであろうが、若者であろうが、老人であろうが、この問題はついて回る。

ましてはこんな世の中。
政府は滅茶苦茶な政策ばかり、年金不安も拭えない、金融機関はお金に働いてもらいましょうとあおってくる、ネットを見るとFIREとかlierだかこれまた自分が遅れているような気になる。

ではどうするかというと、やっぱり身近な本を読んでみて、考えてみて、時間があれば検証して、そして行動する(あとはPDCA)、これしかないと思います。

そして、お金に関しては私は橘氏の洞察をかなり参考にしています。

・・・

本作は、筆者による投資心構えと言ったテイストの内容です。
ただ、世のビジネス書と違い大いにシニカルさを(そして一部には落胆さえ)もたらす結論となっています。

その要旨と言えば、
1. 投資はゼロサムゲーム(負ける額と勝った額は同値)
2. 値動きは予測できない。他人の投票を予測しながら投票する。
3. 結論として株式インデックスファンド一択。
ということです。

この中でいわゆるファンダメンタル分析の有効性、テクニカル派の言い分、CAPMとかベータなどの株式分析の話、デイ・トレーダーの没落、ウォーレン・バフェット氏の投資方針、金融機関(ファンドマネジャーの劣位、金融機関の欺瞞)等々が語られます。

私はこれまで金融機関で15年くらい業務に従事していましたが、氏の意見には概ね同意できます。自助努力と世間は言うのですが、良い顔をして寄ってくる金融機関と話す前に自己勉強が必要だと思います。

一つなんともゆかしいのは筆者は最後に個別銘柄への投資を否定しているわけではない点でしょうか。投資はギャンブル性(筆者的にはギャンブル)があり、その楽しみを否定していない、換言すれば人の非合理的な部分はそれはそれで取り除かれるべきではない(残しておかれるべき)と主張しているように思えました。

ということで、10数年ぶりに読みましたが、再読しても面白かったです。私なぞはつましい(貧しい)老後が見えているのですが、わずかな手持ちで最適な準備をしたいと思いました。

投資の準備をしたい人。投資をもっと勉強したい人。金融機関に興味がある方、関係がある方等々に参考になる本だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 金融・経済系
感想投稿日 : 2021年7月20日
読了日 : 2021年7月18日
本棚登録日 : 2021年7月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする