まんまこと (文春文庫) まんまことシリーズ 1 (文春文庫 は 37-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年3月10日発売)
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感想 : 211
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畠中さんの作品は初めてでしたが、面白い!マジで。
どれくらい面白いかというと、早速続編を購入したほどです。

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舞台は江戸。お上に訴え出るほどでもなく、長屋の住民同士で解決できる範疇を超えている、そうした「中くらい」のいざこざ・もめごとは、町の名主が裁定していたという。家の玄関前で裁定していたので、そうした名主を「げんか」というとのこと。

主人公は神田界隈の名主の跡取り息子、麻之助。
これがまた、16歳の時まではしっかりした子だったが、突然「真面目さ」をどこかで失くしてきてしまったかのようにチャランポランになってしまった。

この麻之助と、女性に事欠かないイケメン色男清十郎、そして堅物の同心見習の吉五郎。彼ら三人が織りなす、エンタメアクション系+推理系人情系時代小説?

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さて、本作のどこがよいか、というとやはり主人公なのです。

決断が遅いとか、責任を持ちたくないとか(結婚とかいや)、実家住まいながら、我儘言い放題のちょっと面倒な若者笑 ただ、心の奥底ではとても素直で真面目、そして茶化しながらも筋の通った裁定を時に親の代わりに下したり。

何というか、ギャップ萌え的というのでしょうか。

そして、全編通じてじわじわと描かれる、敗れた恋への後悔。そう、きっと麻之助をチャラチャラへらへらに変えたのはその失恋!

そして、その対象がめっちゃ近くにいたりするのです。このあたりも見ものです。

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ちなみに内容は、連篇となっており、少しずつ前後に関係があります。

各話で事件が起こります。「この子はあなたの子よ」とか、堅物の半ボケ老人が昔の恋(架空)を語るうちに本当にその恋人の娘を騙る女性が出てくる、とある植木が誰のものか、親友清十郎の弟が誘拐される、とか。

こうしたトピックが、「まんまこと」「柿の実を半分」「万年、青いやつ」「吾が子か、他の子か、誰の子か」「こけ未練」「静心なく」の六篇構成に散らされ、ある意味テレビドラマのごときの印象でありました。

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ということで、私にとって初の畠中作品でした。

ハマる雰囲気たっぷりです。麻之助とお寿ずの偽装結婚が、本当の恋になるのではと期待しつつ、次の作品は少し時間をおいてから読もうかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸・エッセイ
感想投稿日 : 2024年4月30日
読了日 : 2024年4月29日
本棚登録日 : 2024年4月30日

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