ゲノムが語る生命 ―新しい知の創出 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社 (2004年11月17日発売)
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本棚登録 : 89
感想 : 10
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科学と技術を一緒くたにしない、遺伝子ではなくゲノムとしてとらえる…単なる言葉使いの違いではなく問題をきちんと認識するために必要なこと。もっともだと思う。
生命を生きていることそのものとして、複雑なものであることをそのまま受け入れて捉えよう。
ここには一貫した優しいまなざしがある。
ジャコブの引用という形で、経済・政治面からの科学の扱いに対してチクリと皮肉を入れるあたりも奥ゆかしくてかつシャレている。
遺伝子がどうやって子孫に情報を伝えるかということよりも、個々の生物がどうやって生きているのかを大事にしたい…その通りである。
11世紀の虫を愛づる姫の話が印象的、毛虫が育って綺麗な蝶になるまで…その全てを愛づる。それはまさに科学的な視線。カイコが糸を吐くから絹ができる。蝶になったらできない…今の時代でもかなり変な女の子だが、周囲もまたその姫を愛づる。
その姫がナウシカのイメージになっていたというのも納得。
「物」をブツと読むか、モノと読むかでその印象が大きく異なるという点も納得してしまった。
生物、物質、物体ではなく、生きもの、食べものという読みによってその親近感が異なる。
『ロゴスの名はロゴス』での音読みと訓読みではないが、日本人が昔から使っていた大和言葉はやはり身近に感じられる。
科学でも言葉の大切さを感じさせられる。
中村の視点は理想に過ぎないのかもしれない。
でもこういう暖かい視線が今科学に一番大切なんだろうなとつくづく思う。心温まる一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自然科学
感想投稿日 : 2019年11月26日
読了日 : 2015年7月14日
本棚登録日 : 2019年11月20日

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