超新星紀元

  • 早川書房 (2023年7月19日発売)
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感想 : 31

物語の中で何かと世界の命運を託される子供たち。汎用人型決戦兵器に乗って使徒を殲滅し人類滅亡を防ぐ子供たち。または、地球だけでなく火星の経済にも悪影響を及ぼす大人たちに対してモビルスーツに乗りクーデターを起こす子供たち。こういう物語は自らの未来を切り開くための力(信念)で悪(とされるもの)に立ち向かうことが明確なのだが、この物語は災厄に見舞われて有無を言わさず未来を託され、明らかな悪(とされるもの)のない現代の地球で起こる。ただ生き抜くこと。世界は大きく変わらない(地球環境の変化はあるが生活は可能)のに日常が大きく変わることは、状況は違えどコロナ禍を経験してきた分なかなかに大変なことだと想像できる。この物語では大人たちが全ていなくなるため、知恵や経験が急に無くなることを考えると大変さはその比ではないかもしれない。変化した世界で無邪気な子供の純粋さは残酷で非情であるが、寂しさや心細さが半端ないからこそ人に優しくなれるようにも思う。それにしても過酷で容赦ない世界だった。純粋な欲望は恐ろしい。

地球から8光年離れた恒星が超新星爆発を起こし、地球に大量の放射線が降り注ぐ。そこに含まれる高エネルギー宇宙線は人体の染色体を完全に破壊するものだった。生き延びられるのは、染色体を自己修復する能力がある12歳以下の子供のみ。約1年後にはそれ以外の人類は死滅する。

後書きを見ると、この物語は2003年に本国で出版されたようだが、書き上げられたのは1989年とのこと。少し物語の内容に触れるが、大人が死滅した後の混乱を自意識を持ったAIが解決する場面があり、他にVRワールドも出てくる。だが、目立ったテクノロジーの描写は少なくどちらかと言えば現代的な内容が多かったように思えるのは、30年以上も前と思えば納得かもしれない。その反面、30年以上前にこの物語が書き上げられていたと考えると恐れ入る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月24日
読了日 : 2023年8月24日
本棚登録日 : 2023年8月24日

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