その数学が戦略を決める (文春文庫 S 3-1)

  • 文藝春秋 (2010年6月10日発売)
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4

<本の概要を教えて!>
コンピューターが進化したことにより、数学を使うことで
人間の生活に関するあらゆることが自動的にきめられていく
ようになる、といったSF世界のような話です。

しかし、書かれている内容は至って現実であり、
現在もさまざまなところでこういったサービスは
進化していると思います。

<どんな人向け?>
・数学って人生で何の役に立つの?と思った方
・数学好きの高校生・大学生

※数式はでてきませんが、数学の考え方などは
若干必要になってくるため、数学を完全に
わすれていると厳しいかもしれないです。

<内容をもっと詳しく!>

序章からなかなか興味をひく事例がいろいろ
のっており、
・ワインの価格を方程式であてる
・相性のいい恋人を出会い系サイトがみつけてくれる
・もっとも費用対効果のいい政策がみつかる
・専門家の勘ではなく、データ分析によって治療法を考える
などなど、コンピューターとネットワークが発達
したことで、生活のあらゆるところで数学の考え方が
使われ、現代人の生活が数学に支配されているのが
わかります。

こういった波は専門家の仕事をうばうところまで
きている、と筆者はいっています。

例として医学があげられているのですが、
長い間医学の世界で常識だと信じられてきたような
ことがデータをとってみたら実はちがっていた、
など専門家の権威が統計データに「負けてしまう」
場面もでてきてしまうわけです。


中盤以降はこういった分析手法が可能になってきた
背景についての説明です。

要するに理論的には昔から可能だったのですが、
膨大なデータ量であるため、以前では机上の空論に
おわっていました。

ところが現代ではハードディスクの容量が飛躍的に
進歩し、大量のデータを集めることが可能になりました。

また、通信速度も飛躍的に向上したため、こういった
技術が可能になったと、述べられています。

ただし、もろ手をあげて、コンピューターのよさを
いっているわけでもなく、人間のマニュアル化、
まちがったマーケティングへの悪用、
プライバシーの侵害、必要以上の計算式の過信
など様々な問題点も筆者の視点からあげられて
います。

<感想は?>
概要だけ聞くと、近未来の話のように聞こえるのですが、
インターネットをやっていればいたるところで、すでに
これは毎日実感できること。

たとえばAmazonで本を買ったとすると、
必ず「こんな本もおすすめです」
「この本を買った人はほかにこんな本もかっています」
といった他の本の推薦があるとおもいます。

これはコンピューターが過去の購買履歴から
みて買う確率の高い商品を自動的に認識してる
わけなんですね。

「この本を買う人はこっちの本も何%の確率で買う」
みたいなデータがあってそういった大量のデータを
処理することによってマーケティングに生かしている
わけです。

もちろんamazonだけでなく、youtubeの推薦動画
googleの特定のキーワードでの表示順位、
facebookでのハイライト表示など、
いたるところで「数学」が使われています。

webでのマーケティングに携わっている人から
すると常識なのかもしれません。

そう考えると、
理想の恋人や政府の政策も「数学」で決められる
というのは当然ありえる、と思います。

心理的な抵抗というのはもちろんあるでしょうが・・


ただ、筆者も警鐘をならしているように、
必要以上に数学の力を過信するのは危険です。 

また、その数学自体、式をたてるのは人間です。

たとえば、facebookでのハイライト表示には
新密度という概念があるようなのですが、
いいねをおしたら1点、コメントをかいたら10点
という基準自体は当然人間が決めているわけなので
何をもって新密度とするか、というのは当然
人間が決めています。

また、人間が式を立てる以上かならずその人の
主観が入ります。

facebookの例で言うと、コメントにたいして一律
5点、という人もいるでしょうし、もっとほかの
ファクターも加味してかんがえなければいけない、
という人もいるでしょう。

なので、どんなにコンピューターが進化しても
人間の仕事が完全になくなる、なんてことはないと
思います。


<この本を読むと何か得することは?>
・数学が世の中でどう使われているかが役に立つ!

<本を採点すると?>

個人的採点(5段階で)
読みやすさ・・・・3
(数学アレルギーがあると少し厳しいかも)
オリジナリティ・・5
(数学がどうつかわれているか、はなかなか面白い)
理論的背景・・・・5
(世界中のいろんな事例が豊富に紹介されています。)
とりくみやさ・・・3
(個人が仕事でつかうにはちょっとむずいかも。)
モチベアップ・・・5
(数学という教科の魅力を教えてもらいました!)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2011年6月10日
読了日 : 2011年6月10日
本棚登録日 : 2011年6月10日

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