月光スイッチ (角川文庫 は 43-1)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年1月23日発売)
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感想 : 56
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香織って、只者ではないと感じたね。

恋や男に目が眩んでしまっているはずなのに、自分がそのような状態であることを醒めて自覚している。そのくせ、その状況が自分に及ぼす悲しみや寂しさ、どうしようもない敗北感などの影響にも普通に晒されてる。いわば「感情の波に翻弄されながら、翻弄されている自分を画用紙に写しとる」なんて離れ業をやってのけているような。

自分の中から起こる願いや衝動に対しておとなしく従いつつ。その結果による自分の感情の起伏を予期しながらもそのまま受け止めつつ。次の瞬間には、それをすっかり消化してしまい、私たちが気づく頃には、少し素敵に成長している。

日常のよくある風景からはちょっぴりズレた、何気に癖のある日常らしき日々で出会う人たちの出すエネルギーをまともにくらいながら、のたうちまわることもなく、深手を負うこともなく淡々と成長してゆく香織。男性にこんな女性を描けるものとは知らなかった。

違和感はひとつだけ。囲われていたにしても、香織はなぜ働いていなかったのだろうか。ただセイちゃんを待つ、ということは、何にもない時間を何にもしないでやり過ごすということだから…普通は耐えられそうもないのに。

だからこそ、の香織なのかもしれないね。うん。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年1月31日
読了日 : 2015年1月31日
本棚登録日 : 2015年1月4日

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