去年はいい年になるだろう

著者 :
  • PHP研究所 (2010年4月2日発売)
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2001年9月11日、突如上空に現れた球体は、瞬く間に全世界の軍事力を無力化した。
ガーディアンと自称する彼らは未来からやってきたアンドロイドであった。
彼らの目的は、世界征服ではなく、人を不幸から守ることらしい。
彼らのおかげであの米国同時多発テロは起こらなかった!
彼らのもたらした情報によって、本来の歴史で起こった自然災害、テロ、戦争、大事故などが防げるようになった一方で、未来の自分からのメッセージに翻弄され、人生が大きく変わってしまう人も多くいた。
主人公のSF小説家山本弘も突然の非現実的な出来事と未来の自分からのメッセージに翻弄されていく・・・

私小説というだけあって自伝的要素も多く含んだ小説となっています。
過去の自分自身を主人公にしてそこから歴史改変ものの物語を作るっていう発想が面白いですね。
こういう自伝もありですね!!
自己オマージュ作品とういう単語が思い浮かびましたw
純粋にSF小説として読むよりも、山本弘の自伝として読んだ方が面白いように思います。
SF小説としても十二分に面白ですけど。
是非とも『アイの物語』を読んでから読んでもらいたい!!
『アイの物語』とはまた違ったアンドロイド像が見られて面白いですよ。

「作家にとって最高の作品は自分の作品だ。だってそれは、自分好みの題材を、自分好みの手法で調理し、自分好みに味つけしたものだからだ。まさに僕のためのオーダーメイド料理だ。美味しくないわけがない。」

しかし、山本作品のアンドロイドの微妙に人間と異なる描写は巧みですね。
わずかな違いでしかないんだけど、そこに違和感を感じ、それが逆に怖い。
結局人間とアンドロイドは互いに理解しあえない、そしてそれが当てはまるのは何も人間とアンドロイドだけではない・・・

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年5月26日
読了日 : 2011年9月12日
本棚登録日 : 2011年9月12日

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