人間そっくりのアンドロイドを創った研究者による研究記録。といっても専門的な話ではなく、研究の動機や、どんなことが起こったか、何をしたか、今後何をしたいか、を中心にかかれているので読みやすく、面白い。そして、ちょいちょい間にはさまれる著者のこだわりが人となりを表していて、なるほど研究者になる人というのはやっぱりこだわりの人なんだなあ、と変なところで納得した。自分でカバンをつくれるという話や、美容整形の話。色んなことを徹底的にやってみるんですね、この著者は。
著者の究極の興味は「自分とは何か?」「人間とは何か?」ということなので、哲学的な問いも出てきます。それを頭で考えるのではなく、実際にそれを実験(?)できるようなものをつくってそこに何が起こるかによって追及していく。
アンドロイドが人間になれるか、というところ、著者はかなり実現可能だという方向で書いているけど、私は、アンドロイドが自分を自分だと自覚することはできないかぎり、無理だと思うのだけど、どうだろう。今の技術では、人間の意思を忠実に再現し、なおかつある程度はプログラミングで自動的に動くことが出来るようになる。つまり、人間的に反応できるようになる。でもそれはあくまでも「反応」であって、自発的な動きではない。動きたいかどうかをプログラミングで制御できるかもしれないけど、それは自分の意思ではない。ま、どこを目指すかというところなんでしょうけど。果たしてアンドロイドは自分の意思を持つことができるようになるのか。この著者の次作があるので、それも読んでみようと思う。
アンドロイド演劇についても少し。人間があやつるアンドロイドに演劇をさせるくだりがあって、人間を越える演技が出来た、とあった。なるほど、と思いつつ読んでいて「ん?」と思った。これって、文楽と同じじゃない?つまり、生身じゃない人形(ひとがた)には自分の心情を反映させやすいために、より真に迫ってくるっていう。能面とか。そっち方面は本題ではないけど、展開させると面白い話になりそうな気がしました。
そうだ、余談だけど、この本の割と最初に出てくる「不気味の谷」、この本を読む前に読んだ「屍者の帝国」に出てきてたのでびっくり!学術的な言葉だったんだ。変なところでまた「本のしりとり」が起こりました。
- 感想投稿日 : 2013年6月5日
- 読了日 : 2013年6月4日
- 本棚登録日 : 2013年6月5日
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