AX アックス

著者 :
  • KADOKAWA (2017年7月28日発売)
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本棚登録 : 5566
感想 : 738
5

伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズ!
先日読んだ『マリアビートル』から繋がる部分もあったので、未読の方は、やはり発行順で読むことをオススメしたい。

さて、今回は殺し屋「兜」の半生を描いた作品。
十代後半から裏の世界に手を染めて生きて来た兜が、その秘密は隠したままに家庭を築き、妻と息子とのしあわせを望む一方で、自分が殺めて来た罪と向き合って生きる様子が、心に迫って来た。

殺し屋界では一目置かれた存在の兜が、妻の前では別人の様になり、妻との円滑なコミュニケーションのノウハウを記したノートを記録することをライフワークの一貫としている。
一見すると、単なる恐妻家のようだが、読み進めるにつれ、それは兜が背負って来た人生で、唯一掴んだかけがえのない幸せをもたらしてくれた妻に対する愛情以外の何者でもないのだと気付かされた。特に、最後に種明かしとなる「キッズパーク開園」のチラシには、目頭が熱くなった。

ラストに兜の一人息子である克巳と医師がマンションで対峙する場面は、絶対絶命!と叫びそうになったが・・・
ネタバレになるので控えるとして、情報屋の桃、クリーニング屋、本当良い仕事しますねぇ。最後まできっちりと方を付けてくれて、この展開は予想外!やっぱり流石の伊坂さんです。

マリアビートルが、新幹線内で繰り広げられる疾走感溢れるエンターテイメントだとすると、本作は殺し屋を生業とする男の生き様を描いた内容。
ユーモアもあって、ハラハラドキドキもあって、時に心温まる作品だった。いやぁ〜面白い!!
ちょっと切なさは残るけれど、読後感もすごく良かった。
独身者より既婚者の方が心に響くと思う。

ちなみにタイトルのAXって斧なんですね。
やられた〜笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月5日
読了日 : 2023年10月5日
本棚登録日 : 2023年9月22日

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