放課後 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1988年7月7日発売)
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本棚登録 : 15372
感想 : 1132
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東野圭吾さんデビュー作『放課後』
第三十一回江戸川乱歩賞受賞作

物語の舞台は私立精華女子高等学校
主人公である数学教師の前島はクールで生徒に干渉しないことから「マシン」と呼ばれている。

ある日、校内の更衣室で生徒指導の教師の死体が見つかった。密室で起こった青酸中毒の犯人は一体誰なのか・・・

喫煙で停学処分になる生徒や、
文武両道で剣道部の主将。
前島を誘惑してくる洋弓部の主将もいれば
独身で男遊びの好きな女教師もいる。
疑わしき犯人候補が次から次へと登場する。
そんな中、第二の殺人が起きる・・・


いやぁ、面白かった!
舞台が女子高とあって生徒と教師が続々登場する。
これだけ沢山登場させても読み手が混乱しないのは、キャラクター分けと主人公との関係性の描き方が巧みだからと思う。

それぞれに個性豊かな面々と学園風景が相まって、読み進める内に犯人予想がコロコロ変わり、しまいには全員怪しく思えてくる。笑
東野圭吾さん作品には珍しく、時折挿絵でトリックの図解を見せてくれるのも新鮮だった。まさに推理しながら読み進めるという醍醐味を十分に楽しめる作品だった。

随所に細かく丁寧に張り巡らされた伏線と、その回収に至るまでの構成力は流石の一言。最後の最後に、実は学園だけが舞台ではなかったんだ!というオチの付け方も捻りが効いていた。この最後の一撃が見事だった!
どうしてタイトル『放課後』なんだろう?
が胸にストンと落ちてきた。

全体を通してスケールの派手さは無かったが、青春推理小説ならではの犯罪心理がとてもリアルに響いた。犯人の動機の発想力にも驚いたが、高校生という多感な時期ならではだろう。確かに想像してみれば納得のいくものだった。
これがデビュー作とは・・・
東野圭吾さん、凄すぎる!

今から約40年前の1985年の受賞作品。
時代背景が現代と異なる部分に、時々懐かしい気付きや発見をする方も多いと思う。これを違和感と感じるとちょっと寂しい。
東野圭吾さんを初めて読む方にも、既に沢山読まれている方にも是非お勧めしたい作品。



読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月6日
読了日 : 2023年12月6日
本棚登録日 : 2023年11月15日

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