辻村深月さんの短編集
『噛みあわない会話と、ある過去について』
ミステリー&ホラー小説のような趣きの作品で、短編毎の関連性はない。登場人物の心の表側に目を向けていると、やがて裏側にある心の闇が姿を表す点が共通している。
誰しも過去の経験から、何れかの作品で少なからず思い当たる節があると思う。人の心の表裏を繊細かつ大胆な描写で見事に描き切った作品だった。
特に、「パッとしない子」と「早穂とゆかり」での緊迫感漂う密室での対峙シーンは、読んでいて居心地が悪くなる程だった。
執拗に相手を責め立てたり、過去の負の記憶に固執する姿はあまり共感出来なかったが、過去に受けた傷が大きい程、その報復は意表を突いたものとなるんだろう。願わくば、そんな場面に遭遇することが無いように、相手の気持ちに寄り添える人でありたいと思う。
以下、短編の簡単な紹介
「ナベちゃんのヨメ」
大学時代に女友達に混じり仲の良かったナベちゃんが結婚するという。紹介された婚約者はどこかズレていて・・・
「パッとしない子」
国民的人気アイドルになった教え子が母校訪問にやってくる。小学校教諭の美穂は再会を喜ぶのだが・・・
「ママ・はは」
スミちゃんは子育てに強い拘りをもつ母に育てられた。抑圧されて育った彼女の心が求めたものとは・・・
「早穂とゆかり」
塾経営者で時の人となったゆかり。学生時代のゆかりの秘密を知るライターの早穂は彼女の元へ取材に出向くのだが・・・
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年3月20日
- 読了日 : 2024年3月20日
- 本棚登録日 : 2024年3月10日
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コメント 1件
アールグレイさんのコメント
2024/03/21