ジェイムズ・エルロイの小説を買う時はいつも少しだけ思い切りがいる。
彼の文体は親しみやすいとは言い難いし、次から次へと新たな登場人物が出てきては、違う話をし始める。
その世界に入るまでが大変な作家なのだ。
もし上下二巻のハードカバーを購入しても、まったく入り込めなかったらモッタイないなあ、という気持ちのハードルがある。
新刊が出ていることは知っていても、ネットでは買えない作家だ。
でも実際に書店で手に取ってみれば、いきなりA・E・ハウスマンの文章から、
「肉は動かずとも、血はさまよう。
息はいつまでも止めておけない。
目覚めよ、若者。旅が終われば、
眠る時間は充分にあるのだから。」
なんてある。もう買うしかない。
実際「THENあのとき」と書かれた小節から始まるストーリーは、軽快に走りだし、引き込まれる。
ただいつものようにデモーニッシュな黒い手ごたえが立ちあがってこない。
これは失敗かなあ、さすがのエルロイもついに老いたか、と思って100p位。
まあ「アメリカ文学界の狂犬」最後の大仕事かもしれないんだから、少しツマラナクても付き合うか、とアキラメかけたあたりから、雰囲気が良くなってエルロイワールド没入。
で、今回、読んでみてエルロイの魅力がついに分かった。
エルロイにはみんな、狂気だの暗黒だのというけど、結局、この人の小説はカッコイイのだ!
ぶつ切りの文体も無愛想なカッコ良さがあるし、登場人物もカッコイイ。
過剰な言い回しがないのに、詩的な余韻が残り、絶対に安っぽくしないぞ、子供だましにはしないぞ、という矜持がある。
いわゆるCoolってことだな。
結局、音楽も小説も、最後の判断基準はカッコイイか悪いか、ってことだ。
ジェイムズ・エルロイはカッコイイ。
これが結論。
ps
この作品は暗黒のLA4部作を完成させたエルロイの次の連作長編モノ。
アンダーワールドシリーズの最終作となるものです。
この前にはアメリカン・デス・トリップがあり、その前にはアメリカン・タブロイドがあるんですが、タブロイドはもう新刊じゃ買えないんですね。
エルロイが初めて、というなら古本でもタブロイドを買ってからがイイと思う。
そこまで言うなら、その前に暗黒のLA4部作を読むともっとオモシロイけどね。
そうなるとブラック・ダリア、が最初ということになる。
1冊だけなら「ホワイト・ジャズ」が至高。
と思ったら「ホワイト・ジャズ」も新刊じゃ買えないのか!
でも古本で安かったら買いだよこの本は。
- 感想投稿日 : 2012年1月15日
- 読了日 : 2012年1月15日
- 本棚登録日 : 2012年1月15日
みんなの感想をみる