2013年6月13日現在、自分にとって本当に大切な本をひとつ挙げるとしたら、これだ。「悪」とは何なのか、とか。この小説のテーマは何なのか、とか。そういう括りではとても語り切れない。集団の生きづらさ。圧倒的な強度で振りかざされる正義。編集されなかったものたちの叫び……おれは一つひとつの、たくさんの孤独について、もっと考えなければならなかった。
高橋せんせいが見せてくれた世界はとてつもなく大きくて、今の自分の言葉では全然足りない。ひとつ、大切なことを精一杯語ると同時に、いくつもの、大切な何かをこぼしてしまう気がする。
もしかするとここに書かれていることは、文学にしかできないこと。文学の言葉でしか語れないこと。なのかもしれない。でも、文学だからこそ、これほどまで潜れる。文学の言葉だからこそ、こんなにもつなげられる。っていう言い方もできる。そう考えると、文学ってすごい。
世界はこんなにもデタラメで、みんな散り散りだけれど、言葉で何とかつなげられるかもしれない。それだって決して完全ではないけれど、今よりもずっとまともな間違いができるかもしれない。だから言葉を磨くのだ。思考を鍛えるのだ。そんな、生きる活力を与えてくれる作品。また文学に救われた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年6月13日
- 読了日 : 2013年6月13日
- 本棚登録日 : 2013年6月13日
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