歌舞伎好きの人にはお馴染なのだろうが、あいにくそっち方面の趣味がないので、中村仲蔵と言えば落語しか知らない。噺の中での仲蔵は、斧定九郎の役作りに悩み、ついに現代に伝わる黒羽二重に朱鞘の大小、破れ傘を傾げて血反吐を吐くというスタイルを確立して、江戸中の話題をかっさらった人物として描かれる。
『仲蔵狂乱』は、この有名なエピソードはもちろん織り込みつつ、みなし子に育ち、最下級の稲荷町で苦渋を舐めた時代から、ついに名題にまで昇り詰め、江戸三座の座頭を張るまでになった稀代の歌舞伎役者の人生を、当時の世相を交えながら詳細に描く、著者渾身の一篇。こういう力の入った小説を読むのは、最高の読書体験だ。
萩尾望都の解説も、(解説にはなっていないのだが)秀逸。読書感想文は斯く書くべし。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2017年6月17日
- 読了日 : 2017年6月17日
- 本棚登録日 : 2017年6月17日
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