本の扉を開けると、
「その人が
眠っているところを見かけたら
どうか やさしくしてほしい
その人は ボクの大切な先生だから」
と記されている。直木賞作家・色川武大へのオマージュを込めた作品である事が窺える。
新婚ほどなく女優であった妻を癌で亡くした“ボク”は、重度のアルコール依存症に陥り心身共にボロボロとなった。田舎に引っ込み時々連絡をくれる先輩のKさんから、逢わせたい人がいると云ってきた。
マージャンの神様と呼ばれていたその人は、食事中であろうと突然ところかまわず眠ってしまう難病・ナルコレプシーという病気を抱えていた。
“ボク”こと著者も小説誌に小説を書いていたが、その後妻の喪失などで書く気持ちが失せていた。君の小説の良さがわかると“先生”が励ますのである。
愛知県の一宮、四国松山、など競輪場のある地を旅する途上で“ボク”にある心の変化が訪れるのである。そうした先生と著者との出会いを描いた自伝的小説である。
松山のある映画館の前で、亡くなった妻のポスターを目にし、動揺する“ボク”に“先生”が、「・・・人は病気や事故で亡くなるんじゃないそうです。人は寿命で亡くなるそうです」というくだりとか、それとなく励ます“先生”の心の機微が、心に残る。
『少年譜』『羊の目』とこれで三冊目だが、人生は出会うべくして運命を変えてくれる人と出会うのだろうか・・・。心穏やかになる読後感だ!
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2011年10月8日
- 読了日 : 2011年10月8日
- 本棚登録日 : 2011年10月8日
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