少将滋幹は大納言藤原国経の息子。母は業平の孫。
この2人50歳の歳の差がある。70代の国経が大事に大事にしていた美しく若き妻は20代。
おいらくの恋にも程がある。本当に国経の子だろうか?
この若くて美しい妻の噂を聞きつけ、国経の甥である藤原時平に奪われてしまう。
その時国経の元に残された子供が滋幹である。
話はまだ、若き夫人が国経の元にいた頃、平中が夫人のところに通うところから始まる。
噂を聞いた時平が平中を呼び夫人のことを聞き出す。2人のやりとりが面白いし、時平にしてやられる平中が不憫すぎて笑える。
以前読んだ小説「時平の桜、菅公の梅」ではこの滋幹は時平が夫人の元に忍び込んで、その時の子のような描き方だったが実際はどうだろうか?
時平の元に行った夫人は、「時平の桜、菅公の梅」では子供は生まれていないが、谷崎潤一郎さんのこの小説では子供を生んでいる。色々と設定が異なっている。国経はやや老ぼれた感じが強いけれど、時平は傲慢で自信家な谷崎作品の方がしっくりくる。
妻を奪われた後の国経が不憫。
その行動は不可能だけれど、そうするしかなかったのも哀れ。
時平の元に行ってしまった母に会いたいとも言えず、耐えていた滋幹が、40年経ってやっと再会したところは涙ぐんでしまう。
「時平の桜、菅公の梅」と読み比べてみるのも面白いと思う。
昭和28年に書かれたと思えない小説。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年4月30日
- 読了日 : 2023年4月27日
- 本棚登録日 : 2023年4月21日
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