そして、バトンは渡された (文春文庫 せ 8-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年9月2日発売)
4.24
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本棚登録 : 28716
感想 : 2288
4

瀬尾まいこ 著

“困った。全然不幸ではないのだ。”
瀬尾さん特有の出だしで始まるこの物語り
バトンって…
人生の岐路でのバトンってことなのか…。
別れと出会い、そして繋がる人生。

主人公の優子は親の離婚で、4回も苗字を変える…でも、ちっとも不幸じゃない
強がりでもなく、飄々としているふうではあるが、それなりに悲しみや友達とのゴタゴタに揉まれながらも、達観して生きてるように見える。
しかしながら、血が繋がっていようがいまいが、
自分がどう感じて生きてるかが問題なのだと思うけれど…なんと言うか、
実にハートウォーミングなこの物語りには、堅苦しい心配など要らない爽やかな風が吹いている。

本書についてのあらすじは無用で、
一人一人が読んで感じる作品だとも思う。

生まれた時に一緒に暮らしていた実父の
水戸さんといい、その後(苗字が変わり)親になる梨花さん、泉ヶ原さん、最後の父親となる森宮さんといい、どの人物もあり得ないくらいに、優しい善い人なんだ!
こんな関係性の中で不幸なはずがないってくらいの出来た人間ばかり…
自分は特に最後の森宮さんが個人的に、
とてもユニークで好きだけど(^^;;
人間性に於いてはどの親も遜色ない。
そして、一番洞察力ある高校時代の向井先生
(本当に素敵な先生)の卒業前に優子に宛てた手紙

「あなたみたいに親にたくさんの愛情を注が  
  れている人はなかなかいない」
と書かれたあった、、その言葉に集約された
あまりある大きなそれぞれの優子への愛情に羨ましくも恐れ多いけど、その通りだと感じただろう優子の思いと自分の思いも重なった気がした。

その他の優子のまわりに集まる人は、誰一人として悪い人はいなくて、
素晴らしい人格者ばかりで、出来すぎてる感は否めないけれど…(・・;)
きっと、瀬尾まいこさんの描く世界は、
いつもそうなんだって思う。
いくら優子がそんな愛情を注いでくれる人たちを裏切らないように、気を遣ったり、いい子でいようとしたとしても…どの人のどんな人生の中に於いても、それぞれふりをしたり、気遣いしながら生きているはずだ、もっともっと、理不尽な目に遭うこともあるじゃない…そう考えたら、
あまりにも恵まれ過ぎてるんじゃないか!と嫌味な気持ちになりそうなんだけど、
何だろう、どうしてだか、そんな嫌味な思いさえ払拭されて、爽やかな気持ちで泣けてしまう( ; ; )

独り者でいきなり、
優子の父親になった森宮さん、父親になったことに
「自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が2倍以上になることだよって。明日が二つ出来るなんて、すごいと思わない?未来が倍になるなら絶対したいだろう…」とさえ言わしめる。

自分に子どもはいないが、そんな私でさえ感動してしまうんだから…子どもを持つ親には、もっと心に響くはずだと思う、響いてほしいと思う。

それから、瀬尾まいこさんの本には(私が読んだ瀬尾さんの作品には…)いつも、美味しそうな食べ物がたくさん出てくる。
家庭料理だったり、思いついた材料で作る妙な料理だったり、近所の美味しいケーキや和菓子だったり、淹れてくれるお茶にさえ、
ほっこりあたたかみを感じで、美味しそうに食べる描写は、こちらまで、いやしんぼうになって、食欲が湧いてくる(@ ̄ρ ̄@)
いつも、作って待ってくれる人がいるって贅沢で素敵なことだなぁと思う、有難いことだと思う。
その反対もありだ!自分の作ったものを喜んで食べてくれる人がいるだけで幸せなことだ
料理が不得意な私でも、食べてくれる人がいるから作れるような…(^◇^;)
私事だが、薬の影響で味覚が失われつつある今でも、記憶や作り手の愛情で味わうことが出来る気がする。

梨花さんが云う「ニコニコしてたらラッキーなことが訪れるよ」
「楽しい時は思いっきり、
 しんどい時もそれなりに笑っておかなきゃ」
何だか、泣けて笑みが溢れてしまう

結局、癒されてしまうのよね、そんな癒されバトン受けとりましたよ!

“happy go lucky♪”ヽ(*^∇^*)ノ*:・'゚☆
なんて…自分にもう一度、言い聞かせてみる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月22日
読了日 : 2021年11月22日
本棚登録日 : 2021年11月22日

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コメント 2件

らむさんのコメント
2022/02/17

hiromida2さん、はじめまして。
たくさんのいいねとフォローありがとうございます!(^^)


わたしも『そして、バトンは渡された』を読んだのですが、
hiromida2さんのレビューに最初から最後までとても共感しました!
「爽やかな気持ちで泣ける」、まさにその通りだなと思います。


拙い感想ばかりのわたしですが、よろしくお願いします!

hiromida2さんのコメント
2022/02/17

らむさん、はじめまして。
こんにちは!
こちらこそ、いいね、フォローありがとうございます♪
コメント嬉しかったです(。◠‿◠。)♡

私の方こそ拙いレビューに
同じように“爽やかな気持ちで泣ける”
思いのバトンが繋がったようで嬉しいです。

らむさんのレビューに私も作品の情景を
思い出せてほのぼのさせてもらってます。
らむさんの本棚も私の好きな
読みたくなる本が溢れてて
本棚を覗くのも楽しみです♪
  
今後とも、よろしくお願い致します(^^)

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