明解量子宇宙論入門 (KS物理専門書)

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  • 講談社 (2013年3月22日発売)
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5

Ⅰ~Ⅱ部では、いわゆる教科書では省かれている、方程式の成り立ちや物理的解釈の変遷、当時の背景などが詳しく書かれ、なるほどの連続である。
Ⅲ~Ⅳ部では、最新物理理論のオンパレードで厳密性を損なわない範囲で数式を用いて説明される。単純に好奇心がそそられる。

全体的には学部3,4年生から大学院生向けの内容か。

この分野は手詰まりなのが、よく分かってしまい、一瞬、物理を学ぶモチベーションが下がったが、よくよく考えてみると、だからこそ、これだけの多様な考え方、アプローチが生まれている、その創造性を感じるために学ぼうと思えた。

・アインシュタインの宇宙項の導入
・共動座標、フリードマン方程式(福江の宇宙論でやったことの裏付けが得られる)、質量がない場合の加速膨張
・一様等方性を持つ時空は3つのタイプしかない。ロバートソンウォーカー計量に尽くされている。
・作用の停留値が複数の場合の解釈が多世界解釈の論点となる。
・場の理論の場合、エネルギーの保存則はエネルギーEの値が一定ではなく、エネルギー運動力テンソルの微分形が0と表されるので、急激膨張の際にエネルギー密度が一定でも矛盾はない。
・アインシュタイン方程式に、微分されたものではなく、エネルギー運動テンソル自体が現れることが、暗黒エネルギーの存在と密接に結びつく。
・宇宙がどのように誕生したかは哲学的な問題ではなくて、どのような境界条件が妥当かという単純な問題に過ぎない。
・特異点定理により、アインシュタイン方程式が厳密に成り立つ一般相対性理論の枠内では周期的に膨張・収縮を繰り返す振動宇宙は否定される。
・マルチバーサルな定数。プランク定数の特異性。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本<物理学>
感想投稿日 : 2018年12月10日
読了日 : 2018年12月14日
本棚登録日 : 2018年12月10日

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