茶の本 (岩波文庫 青 115-1)

  • 岩波書店 (1961年6月5日発売)
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部屋の模様替えの参考として読みました。

興味深かったのは、(茶道のベースとなった)禅の思想で完全よりも不完全な美を好む理由についての説明。

「不完全なものを想像によって心の中で完成する、その過程にこそ重きを置くから」とのこと(特に触れられていませんでしたが、禅の体験による知を重んじる性質に由来しているのでしょうか)。

これは感動的な発見でした。

なぜならこの考えをもとにすれば、日本のアシンメトリーの美学に「不完全は不完全でも、完全を示唆するような不完全じゃなきゃだめですよ」というルールが加わるわけです。

日本の美は引き算の美とはよく言われますが、完成系あっての引き算だと。

知っている人には当たり前のことなのかもしれません。
でもわたしは、日本美の背景に流れている思想を知らなかったので、日本的な美しさに憧れつつも、それを鑑賞・創造するための基準を持たなかったので。

それから、茶室においては美術品を据え置きではなく、臨時的な装飾として楽しむという指摘にも驚きましたね。
そしてその臨時的な装飾を全力で楽しむために、その他のあらゆる調子は控えめに、書や花を主役に生かすための色合いに合わせる。

言われてみればそのとおりで、掛け軸にしても花入にしても、取り外しがしやすいことを前提にしていて。
昔の日本人が、そのときどきの移ろいを楽しむ、という優雅な視点を持っていたことを誇らしく思うとともに、今のわたしたちの社会はやはり西洋化していて、空間を彩るものは据え置きのものが大半です。

ある程度仕方ない部分があるとはいえ、もっとこういう美学を反映するためのアイデアがないものかなあと妄想します。
たとえば茶室の囲炉裏は畳の下に仕舞ってあったり、そういう「隠す」工夫は現代のインテリアでも取り入れられないものでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文化研究(日本)
感想投稿日 : 2015年5月10日
読了日 : 2015年5月1日
本棚登録日 : 2015年5月10日

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