アステカとインカ 黄金帝国の滅亡 (講談社学術文庫)

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  • 講談社 (2020年11月12日発売)
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感想 : 7
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凄まじい蛮行と収奪のイメージの強いスペイン人の南米征服だが、ほんの前世紀までは栄光の大遠征、大探検にして、原住民を野蛮な風習から解放する善行ですらあった。本書も被征服者視点を謳ってはいるものの、事績をスペイン人の記録によっている為、悪行への糾弾はあるとはいえ、どうしても征服者目線がち。ただ文明が文明を滅ぼす行為は人類史では普通で、ある意味それが海を隔てた未知の大陸で起こったに過ぎない。負けた側視点で見ると、僅かな人数に支配され横暴を許した既存の大帝国への忸怩たる思いだけがあり、勝った側から見ると、ほとんど情報の無い広大な大陸を、黄金欲の赴くまま探検し、様々な未知の要素にぶつかりながら征服するストーリーは、RPGの世界のようにも感じられた。16世紀の支配被支配の関係が貧富の差として今日まで続いているという指摘には、歴史を学ぶべき理由が提示されている。普段世界史として扱われる機会の少ない南米史だけに、インカとアステカ征服の経緯をテンポよく追った本書は、概史としてお薦め。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2021年1月3日
読了日 : 2021年1月3日
本棚登録日 : 2021年1月3日

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