考え方のコツ (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2014年11月7日発売)
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本棚登録 : 1147
感想 : 80
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1.著者;松浦氏は1965年東京生まれ。文筆家、書籍商。「暮らしの手帖」元編集長。暮らし・仕事の楽しさ・豊かさ・学びに関する執筆や雑誌連載・講演会等の活動を行う。著書多数。信条は「正直・親切・笑顔」。30代の頃は、アパートの家賃すら払えない生活。週3日は本を売り歩き、残りの4日間はアルバイトを経験したという苦労人。
2.本書;松浦氏は書いています。「新たに学んだり、発見した働き方、今こそと思う仕事に対する新しい気持ち、そういった、仕事において自分を高めるために書き出しておいたメモをまとめたもの」、「“考え方のコツ”は、自分自身で習得しなければならない」と。仕事と生活のヒントを考察。5章→35項目の構成。第一章;思考術 第二章;想像術 第三章;コミュニケーション術 第四章;時間管理術 第五章;グローバル術。
3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、感想と合わせて記述);
(1)『第一章;思考術の“思考を書く事で視覚化する”』より、「頭に浮かんだ事を文字にする事で、考えを視覚化していきます。頭の中で思考しているよりもずっとスムーズだし、前に進んでいける実用性があります」「“考えのかけら(単語や走り書き、キーワード)”をひたすら白い紙に書いていくと、だんだん自分の頭の中の景色が視覚化されます」
●感想⇒見聞きや読んだ事を文字化するのは思考の第一歩です。私は、印象的な事を文字化し、思考に使います。仕事で、“帰納法的思考(推論構築)”と“演繹法的思考(問題解決)”という2つのやり方で蓄積した文字群を活用。A3サイズ位の不用紙(エコ)を使います。帰納法は、文字群の似たものを括り、妥当性等の推論を立てる方法。もう1つは、演繹法。白紙に数個の箱(①狙い ②現状 ③あるべき姿 ④現状×あるべき姿のギャップ ⑤解決策)を作り、文字群を埋めていきます。自分なりに論理性を判断し、解決策を考え、できる事から実行。ポイントは、あるべき姿の妥当性です。釈迦に説法ですが、読書は人間形成にとても有益です。読むだけでは勿体ないので、一言でも文字化し、思考に使ったり、振返ったりすると、きっと新しい気付きがあるでしょう。
(2)『第二章;想像術“自分の都合よりも相手の幸せを選ぶ”』より、「こちらの都合で物事を判断する習慣は、きっぱりと払拭したい。その為にも想像力を働かせて、仕事のその先にいる人が本当に嬉しいかどうかをイメージするよう、努めています」「“自分がこうだから”ではなく、“もし自分だったら”と仮想して行動する」
●感想⇒上司に口うるさいほど言われました。「何事も相手の立場になって考える事だ」と。会社では、“カスタマー・ファースト(お客様第一)”を基本に仕事をする事を求められました。しかし、私のような凡人には「自分の都合よりも相手の幸せを選ぶ」というのは、理解できても実践するのは容易ではありません。譬えとして、不適切かも知れません。信号のない横断歩道を渡ろうとする際、すぐに止まってくれる車は少数です。私は、子供が横断歩道を渡ろうとしている時、必ず車を止めます(大人の時も止まります)。その子の親になったつもりになれば当然です。「相手の幸せを選ぶ」とは、こうした事の積重ねと考えます。
(3)『第三章;コミュニケーション術“バランスをとる事”』より、「良きコミュニケーションをとる為に一番してはいけない事は、人を妬み、羨む事です」「嫉妬を遠ざける王道は、どんな人にも感謝する事」
●感想⇒「人を妬み、羨む事をしてはいけない」は理解できます。しかし、私は場合によって、“羨む” 事は、あっても良いと考えます。“羨む”気持ちを前向きに捉え、「自分は負けない、羨む相手以上に成功してみせる」というように、自分を鼓舞する道具に使うのです。私も、そうした気持ちで仕事に取り組んできまいた。例えば、上司や先輩に経験では勝てませんでしたが、読書では負けないと考え、努力しました。ある日、人づてに聞きました。「彼はよく勉強している」と。まだ半人前の若い頃の事ですが、嬉しくて高揚したのを覚えています。羨むライバルは必要だと思います。
4.まとめ;松浦さんの人生哲学は、「社会の発展のために寄与する事が、仕事の最大目的である」です。その為のキーワードは、「何でも知っている人ではなく、何でも考える人になれ」と言っています。私達はわからない事があると、すぐにインターネットで調べがちで、考える事を放棄しています。問題が起きたら“現地現物”と言って、実態を注視して考えさせられたものです。こうした自分で考える積重ねが社会発展に繋がる、と思います。前述しましたが、松浦氏はアパートの家賃も払えない時を経験した苦労人です。それだけに、なおさら著者の前向きな指摘は示唆に富み共感出来ます。(以上)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月17日
読了日 : 2021年11月24日
本棚登録日 : 2021年11月24日

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コメント 2件

アル野パカ夫さんのコメント
2023/06/11

どこかで、何でも知っている人になろうとしていた事に気が付きました。それよりも大切なのは、何でも考える人になる事ですね。これからさらに情報が溢れ簡単に手に入るようになるからこそ、自分で考える事が生きてきますよね。本、読んでみます。ありがとうございます。

ダイちゃんさんのコメント
2023/06/11

アル野パカ夫さん、今日は。ダイです。貴重なコメントを頂き、ありがとうございました。饒舌なレビューを読んで貰った上に、イイネまで頂き、嬉しく思います。お礼まで。

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