1.著者;伊集院氏は、小説家兼、作詞家です。電通のCMディレクターになり、松任谷由実や松田聖子のツアー演出を手掛けました。その後作家デビューし、「乳房」で吉川英治文学新人賞、「受け月」で直木賞、「機関車先生」で柴田錬三郎賞、「ごろごろ」で吉川英治文学賞を受賞。また、伊達歩の名で作詞家として活躍。「愚か者」で日本レコード大賞を受賞。マルチな才能を発揮しています。
2.本書;「大人の流儀(全11巻)」の第一弾です。「春(10項目)」「夏(10項目)」「秋(9項目)」「冬(9項目)」そして、補項(愛する人との別れ)の5つの章で構成されています。シリーズ合計で、170万部超のヒット作になったそうです。
3.個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
(1)『春』の章より、「大人が人を叱る時の心得;この頃は、様々な理由で職場の中で怒る人が少なくなっている。それは断じて違う。怒りなさい、叱りなさい、どやしつけなさい。・・・どやしつけてくれた経営者が、親方が、先輩が、いかに正しい事をしてくれたかは後年になってわかるものだ。・・・叱られた時は誰も辛いからである。辛いものは心身にこたえるし、よく効くのだ」
●感想⇒私は、会社に入った頃、上司に度々反論しました。その際、ひどく叱られたものです。私は、経験よりも理論や理屈を優先し、素直に従わなかったのです。しかし、中堅社員になった頃に、叱ってくれた上司の言わんとした真意(経験が知識を凌駕することがある)を理解できるようになり、経験を積む事の大切さを痛感しました。今でも褒められた事よりも叱られた事をよく覚えています。仕事以外にも、“人に対する感謝の気持ち” や “読書の意義”など、貴重な言葉の贈物を頂き、忘れる事はありません。また、人を叱るには一定のルールがあるとも言われました。「人前では叱らない(プライドへの配慮)、人格を傷つけない叱り方、等」です。この事も大変有益な教えでした。某書に「愛情があれば相手の為を思って厳しく叱る」と書いてありました。叱り方への気配りは言わずもがな。
(2)『秋』の章より、「企業の真の財産は社員である;(企業に)人間を作り上げるものがなければ、ただの利益集団でしかない。・・・企業の真の価値は社員である。人間である。誰だって仕事の覚えたては失敗の繰り返しだ。中堅になってもなお失敗はある。苦節、苦悩も日々生じる。しかし、失敗、苦節が人間の力をつけていく。そうして力をつけた企業は底力を持っている」
●感想⇒企業は、“Going Concern”として、永続的に存続し、社会的責任(社員・株主・地域社会への貢献等)を果たさなければなりません。「企業は人なり」と言います。私は、利益追求を優先し、人への思いは二の次に考える企業を評価しません。そういう企業は、経営者を見れば分かります。他人に持論を言う際に、自分の言葉でなくて原稿に頼る幹部は、自社のあるべき姿を考えていない証左です。私は、こんな幹部のいる会社に就職したいと思いません。
(3)『冬』の章より、「大人の仲間入りをする君たちへ;新成人の諸君に少し言っておく。八つの言葉の、③自分だけが良ければいいと考えるな。ガキの時はそれも許されるが、大人の男にとってそれは卑しいことだ」
●感想⇒世の中を見ると、社会生活のルールを守れない人がいます。ゴミの収集場所で思うのですが、キチンとゴミ袋綴じしない人、周辺にゴミが落ちていても拾わない人など・・・。私は、そんな時、自ら袋綴じしたり、こぼれたゴミを私のゴミ袋に入れます(しばしばある事なので、ゴミ袋に多少の余裕を残してゴミ捨てに行きます)。著者が言う、「自分だけよければいいと考えるな」納得です。
4.まとめ;最終章の「愛する人との別れ」は、“妻;夏目雅子さんと暮らした日々”について書いています。「人間には己でどうしようもできないことが一生で起こり得るし、そうなった人を見守ることは使命というか人間は当り前に手を差し伸べるのだと思う」とあります。個人的な事で恐縮です。今年3月に愛犬を亡くしました。享年14歳でした。最後の数ヶ月は体力も衰え、見るのが辛い日々でした。家族の一員の死を見て、さすがに涙しました。伊集院さんは、「時間が解決してくれます」と言っています。しかし、私は、朝夕の散歩でペット犬を見ると、今でも当時が偲ばれます。これも人生なので止むを得ないのでしょう。愛犬が亡くなって、5月からブクログを始めした。気晴らしになり、それなりに良かったと思っています。最後に、一言、『本書は若者へのメッセージが豊富です。一読すれば、心に残る言葉との出合いがきっとある』でしょう。 ( 以 上 )
- 感想投稿日 : 2021年9月27日
- 読了日 : 2021年8月31日
- 本棚登録日 : 2021年8月31日
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