孤独を生ききる (光文社文庫 せ 3-1)

著者 :
  • 光文社 (1998年10月1日発売)
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本棚登録 : 465
感想 : 50
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1.著者;瀬戸内寂聴さんは、瀬戸内晴美として文壇にデビュー。51歳の時、出家し、寂聴という法名に変えました。晴美時代に純文学作家として活躍しました。「夏の終わり」で女流文学賞、「花に問え」で谷崎潤一郎賞を受賞など、数々の賞を受賞しています。仏門に入ってからは、執筆のかたわら定期的に法話活動をこなしていました。さながら、売れっ子タレントの如く、法話当日は大勢の聴衆が会場を埋めていたようです。
2.本書;著者は70歳の頃にこの本を書いています。執筆や法話活動を、精力的にこなしていた時期です。内容は、「第一夜;孤独とは」~「第十三夜;孤独を生ききる」の十三話構成です。寂聴氏を尋ねてきたきた人々の悩みに答えるという形です。人生を達観した見識を元に、相談者の悩みに答えています。本書は、数十回の版を重ねており、長期に亘って読み続けられています。
3.個別感想(私の琴線に触れた書中記述⇒3点);
(1)第二夜から、「挫折感の深い人はその分、愛の深い人になります。・・・何の傷もつかず、挫折を知らず育った人は、思いやりのない、自己本位の人になりがちです」
●感想⇒私も、著者の人に対する見方には同感です。寂聴氏に比べれば、人生経験は希薄ですが、学校や会社等で、様々な人との出会いました。総じて、何かしら挫折(苦労)した経験のある人には、相手の立場に立った言動で、思いやりを感じました。挫折経験のない人は、先人の言動や読書の疑似体験を通して、学べばよいと思います。余談ですが、結婚相手を決める時は、相手の家に出向いて、親族に対する態度をウォッチする事です。私は、親族にぞんざいな口の利き方をする人を信用しません。
(2)第四夜から、「自分の考えを人に押しつけないことです。親切や優しさの押し売りくらい、相手にとって迷惑なものはありません」
●感想⇒著者の考えは、ある程度理解出来ます。しかし、私は、時と場合によって使い分けるのが良いと思います。例えば、大学選びに迷っている人に対しては、××大学がよいと決めつけるのでは無くて、選択肢を与え、決定は本人に任せれば良いでしょう。何事も見て見ぬ振りは好ましくありません。
(3)第五夜から、「孤独でないと出来ない愉しみを思い出して下さい。それは読書です。絶対人に踏み込まれないのが本を読むことです。それから書くことです。書くことも孤独な作業です」
●感想⇒読書は、孤独との最高の付き合いです。人間は究極のところ弱い生き物です。人生には思い悩む事が必ずあります。その時には、孤独になりがちで、何かにすがりたいものです。親族、友人、知人、宗教・・・人によって様々でしょう。私は、読書(座右の書)によって、解決のヒントを探ります。書く事も嫌いではないので、ブクログのレビューは、一つの癒しになっています。
4.まとめ;
著者は、一般人と違い、仏門に入る前に、結婚・離婚・不倫・出家と多彩な経験をしています。私から見れば、自由奔放な生き方をしてきた女性という感です。それが故に、著者自身が、言うに言われぬ孤独を味わったのかもしれません。書中にも、愛・愛人という記述があり、コメント困難な点もあります。但し、前に書いたように、共感と教訓に満ちた記述も多くあり、読んでよかったと思います。余談ですが、タレント気取りが鼻持ちならぬ反面、過去に、著者の本の一部が東大入試(国語問題)に採用されたと、聞きました。その文章力は折紙つきで、純文学としての、レベルの高さを支えたのでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月21日
読了日 : 2021年7月1日
本棚登録日 : 2021年7月1日

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コメント 3件

しなこさんのコメント
2021/11/11

こんにちは。
今日のニュースで思い出し、ちょっと見返したので読ませて頂きました。

ダイちゃんさんさんの感想、良かったです。
親族に…の言葉、その通りだと思います。根本的な事なのに忘れていたようでした。
この言葉があれば一歩前に進めそうな気がします。
ありがとうございました。

ダイちゃんさんのコメント
2021/11/11

しなこさん、今晩は。ダイです。コメントありがとうございました。私は、瀬戸内さんのファンです。また、瀬戸内さんの本を読もうと思います。しなこさんのコメントを拝読すると、心優しさが伝わってきます。よろしくお願いいたします。

ダイちゃんさんのコメント
2021/11/11

瀬戸内寂聴さんのご逝去、至極残念です。安らかにお眠り下さい。

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