初松浦寿輝。「あやめ」「鰈」「ひかがみ」からなる連作。正視できない悍ましい世界を見せつけられ、引き摺りこまれかけ、やっとの思いで戻ってきた。生死の混濁どころではない、はじめから境界すらないのではないか。人間の業の救いなさをここぞとばかりに悪鬼の如く現前させ、異界を幻術させ、目を覆いたくとも目を離させない。そこには恍惚に導く何かがあるのだろうけれど、それは何なのかを私はまだ知りたくない。この蠢く艶めかしい異界に囚われ身動きできなくなる前に、もっと無様に足掻いてみたい。しかしこの求心力に抗うのに相当消耗した。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2014年11月24日
- 読了日 : 2014年11月24日
- 本棚登録日 : 2014年11月24日
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