再読。函入りクロス装丁、旧漢字旧仮名遣い。少女の如く清く可憐で儚げながらに毒をひそめる短篇七作を収録。何れも此れも愛おしく、本を胸にあてギュッと抱きしめたくなる。死と狂気が鱗粉のように少女(または少女の心のままの女性)を纏い、月光を反射しつつ頑なに孤立し、茫洋と彷徨う姿に背筋が凍る。自分をも向こう側に引き込まれてしまいそうな恐怖、怖いけれど魅かれずにいられない。そして男の不在感。この時代、精神の自由の為には依存しない決意が必要だったろう。ネーミングや会話の言葉のセンスが抜群。古めかしい日本語に時々差し込まれるハイカラな語感の塩梅が程よくて、ちょっと真似したくなる。
〈収録作〉ヌマ叔母さん/沙子死す/曼珠沙華の/綠年/星の記録/月影/灰色の扉
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2014年10月26日
- 読了日 : 2014年10月26日
- 本棚登録日 : 2014年10月26日
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