あしながおじさん

  • 朝日出版社 (2018年12月8日発売)
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感想 : 19
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谷川俊太郎さんの訳した『あしながおじさん』を読む。よく考えると、あしながおじさんを読むのはじめてだ。1967年に出版された少年少女世界の文学の初版本。装丁が美しく、いまさっき、偶然持ち込まれたもの。必然なのかな。

作家としての表現力をやしなうには、手紙を書くのがいちばんだと、孤児院から大学へ通わせてくれたあしながおじさんと一方通行の文通をするミスジルーシャアボット。実はぼくも架空の女性「詠美」へ向けた手紙を毎日書き綴っている。手紙って、ほんとに魅力的で、内面の強度を高められる。

内部の強度を鍛える。。外側だけ取り繕っても、現代の社会では、それなりにきれいなものが出来上がってしまう。学生でも、子供でも。それは、響かない。かといって、愛などと言う誰にも反論が許されない抽象的なものでもない。コピー&ペーストでつくられる安易な表現に飛び付くのは、もう卒業しよう。ぼくたちは、ホンモノを磨くためにひとりになる。ぼくは、ダメダメだ。

人生でりっぱな人格が必要になってくるのは大事件がおこったときじゃありません。いざというときにはだれだってしゃんとするものだし、大悲劇になら勇敢に面と向かうことができます。だけど、日常のみみっちいいざこざをわらいとばすってことは、これこそ根性がいるわ。

あしながおじさんとジュデイは、会ったことがないのに、生きている時間を過ごせてる。ただ居合わせた二人とは違う。死んだ時間を何千時間過ごしても意味がない。お互いに尊敬し、信頼し、協力する。それが愛する秘訣なのだと思う。

長新太さんの挿し絵も素敵だった。

世界はこんなにもおおくのものでいっぱいだ
わたしたちがみな王のようにしあわせであるべきなのはたしかなことだ

愛されるよりも愛することって、素晴らしい。過去や未来の不安に創造力を発揮させるなら、いまここに生きることを大切にしたい。いま思いを寄せることに集中したい。

あしながおじさんとのラストは、とても温かい気持ちになった。

未来の大作家ムック

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年3月23日
読了日 : 2020年3月23日
本棚登録日 : 2020年3月23日

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