慈雨

著者 :
  • 集英社 (2016年10月26日発売)
3.76
  • (123)
  • (274)
  • (220)
  • (25)
  • (2)
本棚登録 : 1593
感想 : 254

じんわり心にしみる物語。
慈しみの雨 というタイトルどおり。

60歳で警察を定年退職した神馬(じんば)。
妻と二人、四国八十八か所お遍路の旅に出る。
歩いて、およそ二か月。
妻は知らないが、神馬には明確な目的があった。
自分が関わった事件の被害者供養のため。

とりわけ、16年前に起こった少女殺害事件。
逮捕された犯人は服役しているが、神馬は納得していない。
そんな中、その事件に類似する少女殺害事件が起こり
神馬は旅先から、この事件に深くかかわることになる。

話の中心は事件の解決ではなく、ほかのところ。
(ある意味、事件は未解決のまま終わる)
神馬と家族、元同僚など。
お互いに通わせる心の繋がりが、深く温かい。
何より “人として一番大切なことは何か” が常に問われる。

久しぶりに読む柚月さんの小説。
期待しながら読み始めたけれど、最初は「あれ?」という感じ。
「なんか、退屈?」
ところが、三分の二を過ぎたあたりから、一気に前のめりに。
逆回りをしている巡礼者から、神馬がヒントを得ると
もう、ドキドキ が止まらなくなる。

そして最後は心の中に、タイトルどおりの雨を感じ…。
さすがです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 柚月裕子
感想投稿日 : 2022年10月1日
読了日 : 2022年10月1日
本棚登録日 : 2022年10月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする