風に立つ (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社 (2024年1月10日発売)
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本棚登録 : 1985
感想 : 115

南部鉄器、岩手山、盛岡八幡宮、チャグチャグ馬コ。
読んでいる間、澄んだ空気や風が感じられる、
そんな盛岡で繰り広げられる父と子の物語。

無口な南部鉄器職人の孝雄、72歳。
弟子で息子の悟、38歳。
父親に対するわだかまりを心に抱え
素直に父と話をすることができない。
ただ、古くからの職人、健司は
おしゃべり好きでお人よし。
工房の雰囲気を明るくする。

そんな工房で、孝雄の独断により
問題を起こした少年、春斗を預かることになる。
悟は突然のことに戸惑う。
自分とはまともに口も聞かない父親が
なぜ見ず知らずの少年を預かることにしたのか。

春斗の登場で徐々に変わっていく父と子の関係。
補導委託をすることにした父親の心の内は
父の過去が明らかになる中、あぶり出される。

スナックのママと健司のやり取りが面白い。
ママが言う。
「人なんてさ、どんなに話し合ったって、
100% 分かり合えることなんてないんだよ。
近くにいる人のことは近すぎて見えないこともあるからさ」
「近すぎて見えないって、老眼かよ。
そうそう、話した方が相手のことが分かる」
と、ダジャレを重ねる健司。

もうひとつ、いいなと思ったのは、
悟が春斗の父親に啖呵を切るところ。
「あなたは春斗くんの応援団に過ぎない。
応援することと、味方をすることは違う」
応援団は結果が出ないと怒ることがあるが
味方は寄り添い続ける人だと。

タイトルは、ある高齢会長の言葉に由来するのかな。
「物事には風というものがありましてね。
仕事、人生、時代にいろんな風が吹く。
立ち向かうために必要なものは何だか分かりますか」
回答は、やめておきますね。

とても心温まる物語でした。
でも、柚月ファンとしては、敢えて言いたい。
もう少し読者を信用して
最後の説明は端折ってほしかった。
そして、やはり柚月さんには
エッジの利いたミステリーを書いてほしいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 柚月裕子
感想投稿日 : 2024年2月23日
読了日 : 2024年2月23日
本棚登録日 : 2024年2月23日

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コメント 3件

ハッピーアワーをキメたK村さんのコメント
2024/02/24

y y様

おはようございます
y yさんは柚月ファンでもあるんですよね!
私、y yさんの本棚に柚月さんの作品が沢山あるの知っています笑
ずっと気になっている作者なんですが、まだ読んだ事がありません
家には『盤上の向日葵』と『慈雨』があるのですが、いきなり読んでもOKですかね?

yyさんのコメント
2024/02/24

ハッピーさん ♪♪

おはようございます。
昨夜はこの本を最後まで読んで
そのあとブクログも書いちゃったのですっかり夜ふかし。

ところで、ハッピーさんの本棚の二冊、
どちらも 絶賛 おススメ。
お家にさらっといい本が置いてあるのね♡
シリーズものではありません。そこ、気になりますよね。
私は星評価をしていないけれど、
自分の中では、二冊とも★5つ!!

何に対しても、好みってあるから
お口(?)に合うといいけれど☆彡

ハッピーアワーをキメたK村さんのコメント
2024/02/24

y yさん、お返事ありがとうございます♪

ブクログ書いちゃうと、意外と時間が経っていたりする、する!
あ〜ら、ビックリ!なんてことがよくあります

娘がチョイスした積読本が沢山あるので、主にお伺いをたててから読ませてもらっているの

そう、そう、この二作がシリーズものなのか、ちょっと繋がりがあるからこっちが先の方がいいよ、とかあるのか気になったもので
こういうのは読み慣れている人に聞くのが一番だものね!

y yさん、ありがとう(♡´ェ`♡)カシコマリ!
時間がある日にゆっくり読みますÖk◡̈⑅

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