みなさんの本棚で見かけて手に取った本。
静かに平和に読み終える予定だったのだけど
最後の数ページで涙が滲んできて、困った、困った!
電車の中でなくてよかった。
20代後半の雨宮鳩子、愛称ポッポちゃん。
厳格な祖母に育てられ、反抗して海外へ逃亡。
祖母亡き後、ふるさとの鎌倉に戻り、
家業である代筆屋を継ぐことに。
様々な情景がキュンキュン心に刺さる。
まず、鎌倉っていうだけで憧れ!
お客様に出だされる麦茶、紅茶、柚子茶、
甘酒、葛湯、そして京番茶。
湯気や香りが漂ってくるようで素敵。
そして、代筆の目的によって選ばれる紙と筆記具。
お悔やみ状には白い巻紙に薄墨の筆。
元恋人に「元気です」と伝える手紙は
クリームレイドペーパー(ん?) とガラスペン。
謝絶状は原稿用紙とモンブランの万年筆。
還暦のお祝いカードはロメオのNo.3のボールペン。
絶縁状には羊皮紙と虫こぶインク(初めて聞いた)。
等々、実物を手に取ってみたいと思う文具ばかり。
手書きの “ふみ” が展開する美しい世界。
ポッポちゃんがゆるやかに紡いでいく人間関係。
祖母が文通相手に出していた手紙で知る
ただ厳しいだけだと思っていた祖母の愛。
ポッポちゃんの小さく固まっていた心が
最後にふわっとほどけると、
私の涙腺もほどけてしまった…。
私には、折にふれ手書きの葉書をくれる叔母がいました。
達筆でサラリとしたためられた葉書たち。
ポストに見つけると、ワクワクと同時にプレッシャーも。
だって、相手は目上の叔母さま。
こちらからもお返事を書かなくては、なのです。
パソコンで下書きして、私なりに推敲して、
気合を入れて、思いっきり集中して、ペンで手書き。
字が下手なので、かな~りの緊張感。
上手く書けない分、丁寧に…と。
叔母は数年前に亡くなってしまったのだけど
おかげさまで、文を書くことのハードルは下がりました。
そして、いただいた葉書たちは捨てられません。
書いてくれた叔母の心が宿っているようで。
- 感想投稿日 : 2024年2月20日
- 読了日 : 2024年2月20日
- 本棚登録日 : 2024年2月20日
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