本書は、1945年8月15日前後に、日本、朝鮮、台湾、満州、樺太、南洋諸島という「大日本帝国」を構成していた諸地域がどのように敗戦を迎えていったのかを描くことで、大日本帝国とは何だったのか、その本質はどこにあるのか、どういうかたちで滅亡していったのか、そして帝国の記憶の何が喪われてしまったのか、そのことが現在のわれわれにとってどう関わっているのか、といったことを明らかにしている。
トルーマンのほぼ独断だったポツダム宣言の作成経緯、米英に見捨てられての自主的な朝鮮独立の動きの挫折、30分で決められた「38度線」、蒋介石の当初の台湾軽視に起因する台湾に上陸した国府軍への台湾人の失望、満州国崩壊に伴う甚大な犠牲、沖縄戦の前哨戦といえる南洋諸島での玉砕、最後まで戦闘が続いていた樺太・千島など、本書で描かれた「大日本帝国」崩壊に係る各地域のエピソードは、まさに知らないことだらけであった。しかも、これらの敗戦前後の出来事が、朝鮮半島の分断、台湾と大陸中国の分断、国共内戦の末の中華人民共和国の成立など、現代まで続く混沌とした東アジア情勢に直接つながるものであることも理解した。
私を含め多くの日本人にとって、その崩壊を含む「大日本帝国」としての歴史は忘却の彼方にあると思われるが、著者が指摘するように、これからの東アジアと向き合うためにも、「大日本帝国」としての歴史を直視することが必要だと感じた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2019年9月14日
- 読了日 : 2019年9月14日
- 本棚登録日 : 2018年12月7日
みんなの感想をみる