1946年に出版された、ナチスによる強制収容所での壮絶な経験をつづった本作。
1940年代に到来したナチス・ドイツによるホロコーストの実態が、フランクルの見聞きしたこと体験したことを通して淡々と、生々しく記録として描かれています。この起伏ない文章がむしろ恐怖を越えたさきにある絶望を表しているようでヒヤリとします。
この本の存在を前々から知りながらもなかなか手に取れませんでした。その後何度か手にはしたものの冒頭数ページで挫折したり。それくらい読み切るには覚悟が必要な一冊でした。
フランクルが語ったのはおびただしい大衆の「小さな」犠牲や「小さな」死。ホロコーストでの犠牲は今なお正確には分かっておらず、とてつもなく大きな被害の数字に、実感すら薄れてきます。しかし現実にあった“事実”であること。そして、その1つ1つに人生があり、その1つ1つが残酷な運命を辿ったこと。それらを刻むようにフランクルはこの本をかたちにしたように思います。
読んでいる先から正直気が滅入ります。人はここまで残忍になれるのかと目を覆いたくなるような所業の数々。負の歴史の詳細を知るのにもとても有効な資料ですが、それと同等に人間がしたこと・人間がされたことを想像し「人間とはどうゆう存在か」「生きるとはどうゆうことか」という問いを読み手に強く訴えてきます。
ここに書かれた全てを汲むことは出来ません。そして一冊を読み通したところで完結できる話でもありません。うまく言葉に表せない気持ちは、今後この本を開くたびに少しずつ整理できたらと思います。
- 感想投稿日 : 2017年11月28日
- 読了日 : 2017年11月10日
- 本棚登録日 : 2013年1月20日
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