新装版 長い家の殺人 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2008年4月15日発売)
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越後湯沢にあるロッジ、ゲミニー・ハウス。
学生バンド“メイプル・リーフ”のメンバーが、
大学卒業を前にして、ラストライヴの練習のために
そのロッジに集ったとき、殺人劇の幕は上がる――。
メンバーの一人が、合宿初日の夜に荷物とともに失踪し、
翌日、絞殺死体となって発見されたのだ。
しかも、死亡推定時刻は初日の夜の間であることが判明。
殺害されたあと、発見されるまでの間、
死体はいったいどこへ移動させられていたのか?
警察の捜査も行き詰まり、半年が経って、
メンバーが一人欠けたまま行うことになったラストライヴの日、
またしても惨劇は繰り返される――。

綾辻行人、有栖川有栖、法月綸太郎らと同時期にデビューした
いわゆる“新本格第一世代”の一人である著者の
デビュー作が新たなカバーデザインで蘇った新装版。

「葉桜の季節に君を想うということ」で近年注目された
歌野晶午のデビュー作ということで、
新装版が発売されたときに購入しておいたのが、やっと読めた。

学生バンド内での殺人事件を描いた青春ミステリであり、
また、驚きのトリックと確かな推理が登場する
しっかりとした本格ミステリでもある。

死体移動に用いられたメイントリックは、
物語が始まって50ページくらいまでで容易に看破できる。
島田荘司が絶賛したというトリックだから期待していたのに
「えっ、それ?」と思ってしまうようなトリックだったが、
もしかしたらこの作品が初出なのかもしれない。
だとしたら、確かに凄いかも。

そのトリックを実行するにあたってクリアしなければならない
付随的な問題の存在が謎解きの際に明かされるが、
犯人があれだけ大変な思いをして仕掛けたトリックなのに
起こる現象がやたらと地味なのはちょっと残念。

そのためか、謎解きもかなりさらりとした印象で、
物語のボリュームのわりにラストがあっさりしすぎだと感じた。

また、ミステリにはよくあることだが、
登場人物の会話が不自然なのも気になった。

よくできてはいるが、印象に残りにくいミステリ。
個人的にはあまりピンとこなかったので
島田御大が何を絶賛しているのか、これから読んでみようと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歌野晶午
感想投稿日 : 2012年5月7日
読了日 : 2009年1月18日
本棚登録日 : 2012年5月7日

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