「経理やってると、ダメな社員の名前から覚えていくんだよね。問題ない人って、逆に全く印象に残らないよね」
これは実際に経理部内で仕事中に出た会話でして、本書の内容もまた、このセリフに尽きます。経費を使うということは、他人のお金を使うということ。だからこそ、その使い方には人間性が丸出しになる。
のど飴ひとつ、缶コーヒー一本にも決して身銭を切らないケチな役員。前月の精算書に中途半端に上書きして当月分として矛盾だらけの精算書を提出する営業、自宅に奥さんと子供をおいて単身赴任先の社宅に愛人と堂々と同棲する支店長。
取り引き銀行の行員を多数迎えて行った(ことにした)架空の接待。給料をATMでおろした手数料一回108円也、を毎回経費精算しようとするクズ社員。かと思えば、お気に入りの部下の日帰り出張の日程に一日加算。出張手当も旅費も二日分にしていいし、宿泊代も経費に入れていいから観光しておいでとすすめるバカ経理部長。
わたしがちょこちょこ経理で仕事をしてきたなかでも随分ネタがあるある。
ですが……本書の中にも、おそらく著者が実際に経験した、または取材した経理部でのエピソードが満載。
経理部はお金の扱い方を通してその人の行動や人となりを見ている。本文中では、会計の知識、経理の実務にも留意しながら、経理部はどのように社員の経費の使い方を見て言いるのか、それに対して社員はどう対応すればよいのかについて、多くの事例を紹介。
それは組織人とお金にまつわる、おかしくも役に立つ、時に恐ろしい話、なのである。
- 感想投稿日 : 2018年1月28日
- 本棚登録日 : 2018年1月25日
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