哲学とは一体何なのか?という単純素朴な疑問がありこの本を読む。近代以前の絶対君主的な社会から相互に契約を結ぶという「自由」を主とした社会に変革する中で、宗教的な"物語"ではなく普遍的に了解される原理を導き出すこと。これこそが哲学の本質的役割だということだろうか。
絶対的に正しい世界というものは存在せず、世界を自分がどう理解するのか、また自分と他人との関係性をどう理解するという「視点」の転換が面白い。絶対的な社会が存在することを前提に、それを見つけ出すことこそ(そしてそれには知識が不可欠であること)が哲学だと思っていたから。そうだとすれば、哲学は一部の学者の高尚な学問ではなく、誰もに関わりうる、というか精神的な困難に陥ったときに自分を支えてくれるものだと理解できる。
哲学の本なんだけど、文学について書かれた次の箇所が心に響く。まさに。
p11 表現を通して、同じような事態にぶつかって苦しんでいる人間に、それがじつは多くの人が共有している理由のある苦しみだ、ということを文学は示唆する。そこに文学の大きな力がある。そこに必ずしも解決策があるわけではない。でもそれが生き生きと表現されているということだけで、ふしぎなことに人間の苦境を救う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
新書
- 感想投稿日 : 2013年6月18日
- 読了日 : 2013年6月18日
- 本棚登録日 : 2013年6月9日
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