スペードの3

著者 :
  • 講談社 (2014年3月14日発売)
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本棚登録 : 1912
感想 : 296
5

朝井リョウはどんどん変化していく。
でも、行間に埋め込まれた、赤ん坊の爪のような薄くて鋭い刃は健在なので、読み進めるに連れてどんどん細かい切り傷が増えていく。ヒリヒリと、痛くてたまらない。
特別な場面はないのに、ずっとドキドキして、怖くてたまらなかった。
「学級委員」の立場を守ろうとする心理。特別な物語を求める心理。「自分のため」を押し隠そうとする心理。
どれもみな思い当たることばかりで、だからドキドキするんだろうと思う。

「待っていても革命なんか起きない」という言葉がいちばんぐさっときた。誰も他人のためになんか、革命を起こさない。変えるのはいつも自分だ。
ダークで、やりきれない物語の底に、そっと置かれた励まし。「そこにあるのは、そのときのその人自身」
ぶるっと心が震える一節だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新刊
感想投稿日 : 2014年4月2日
読了日 : 2014年4月2日
本棚登録日 : 2014年4月2日

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